初日はトークショーも、12日まで広田コミセンで復興写真展「3・11以前」/陸前高田(別写真あり)
平成29年10月9日付 2面

陸前高田市広田町の広田地区コミュニティセンターで8日、復興応援写真展「3・11以前」が始まった。東日本大震災で被災する前の古里の風景や住民の表情を記録した写真、およそ100点が展示されるもので、陸前高田・大船渡の両市にまつわる作品も20点ほどパネル化されている。初日は写真家の山本皓一さんと渡部陽一さんのトークショーも開かれ、広田とのかかわりや大震災へ寄せる思いについても語った。会期は12日(木)まで。
この写真展は、東京都の大手出版社・小学館が平成24年に発行した復興応援写真集『3・11以前~美しい東北を永遠に残そう~』を元に開かれ、全国を巡回。同写真集は、被災前の東北を撮影した写真を一般公募して制作され、もうなくなってしまった風景、二度と出会えない人たちを収めたものになっている。写真選定には山本さんと作家の椎名誠さんがあたった。

山本さん㊧と渡部さんのトークショー
同日は開場後から大勢の人が訪れ、気仙両市の懐かしい景色をじっくりと鑑賞。友人同士や家族連れが、パネルを眺めながら思い出を語り合う光景も見られた。また、同町の「赤磯太鼓ARATA」と、大船渡市の草月流「金野社中」が協賛。太鼓演奏と生け花の展示でイベント初日に彩りを添えた。
会場では、山本さんと弟子の渡部さんによるトークショーも。山本さんは大震災直後に広田町を訪れた際、同町在住の志田信一さん(69)と出会ったことで、「3・11以前」の企画が動き出したことを説明。「プロの写真家ではなく、地元の方の思いがこもった写真を集めたいと思った」と振り返った。
元消防署長の志田さんは、広田半島の風光明媚な景色を愛し、写真撮影を長年の趣味としている。大津波により広田町の自宅は半壊。フィルムの大半が流失したが、残った写真やネガを洗っているときに山本さんたちと知り合ったという。同展にも志田さんが撮影した漁師たちや、同町にある椿島などを写した美しい作品が展示されている。
トークショーの中で渡部さんは、「25年間、戦場カメラマンとして世界を歩いてきたが、東日本大震災の被災地には、戦場でも見たことがないような光景が広がっていた。ここからどのように復興を足元へ引き寄せることができるのか、カメラマンとして何ができるのかを考えた」と述懐。
そのうえで「シリアなどの紛争地に暮らす人が、日本から来た僕に『東日本はいまどうなっているのか教えてほしい』と尋ねてくることがある。写真を通じて、日本の声を世界へ伝えることも、大切な仕事ではないかと思っている」と語り、東北へ思いを寄せた。
同展の開場時間は午前10時~午後4時(最終日は午後3時まで)。