「一本松の布」衣装に、来月NYでもコンサート/陸前高田市でコカリナ演奏(別写真あり)

▲ 一本松の前でコカリナを演奏したアンサンブルのメンバー=高田町

 NPO法人日本コカリナ協会長を務めるコカリナ奏者・黒坂黒太郎さん(68)=埼玉県飯能市=らは16日、陸前高田市内で演奏会を開いた。奏者たちが吹いたのは「奇跡の一本松」で作られたコカリナ。演奏時に着用したのは、同じく一本松のチップから誕生した布のショールで、来月には米国・ニューヨークにある音楽の殿堂「カーネギー・ホール」でも、これらを舞台衣装にコカリナコンサートを開催する。
 同協会は平成24年、伐採された一本松の枝部分を使用し、木管楽器の一種・コカリナを制作。高田松原の被災マツも使い、市内小学校の児童らへのコカリナ贈呈を継続するとともに、国内外で演奏会を開いている。
 さらに今年6月、「一本松の繊維でできた布が作れないか」と依頼を受けた繊維メーカー㈱和紙の布(大阪府阪南市)の阿部正登社長が、黒坂さんとともに来市。同市に保管されていた一本松のチップを市から譲り受け、今月上旬までに120㌢×50㍍の反物およそ20本を完成させたという。
 この日は黒坂さんと、同協会員らで構成される日本コカリナアンサンブルのメンバー41人が同市を訪問。一本松のシルエットがプリントされたショールをまとい、奇跡の一本松モニュメント前と、市立高田小学校でその音色を披露した。
 同アンサンブルは、ニューヨークのカーネギー・ホールで現地時間11月12日(日)に開催されるチャリティーイベント「コカリナコンサート 蘇る命」に出演。現地日本人学校の児童を含む総勢250人が、一本松の布で作られたショールやポンチョをまとい、大合奏することになっている。また、益金は難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の支援のために寄付される。
 一本松の布は、木そのものの色合いを生かした淡いベージュ。本来、木片から糸をつくり、布として織るまでには約半年を要するというが、山梨、岐阜、愛知、広島、大阪にある関連8社の尽力により、これを3カ月間で完成させたという。
 黒坂さんは、「阿部社長が『こんなにいい布ができるとは思わなかった』と感激していたほど。業者の皆さんも一生懸命に作ってくださった」と、その出来栄えに満足の様子。「一本松から力をいただきながら、これからも復興支援を続けていく。東日本の被災地にエールを送ってくれたニューヨークの人々にも、皆さんに代わってお礼を伝えたい」と語った。
 同法人はこの日、陸前高田市役所も訪れ、戸羽太市長に布1ロールを贈呈した。