救命救急サービス開始へ、未来かなえ機構/気仙

▲ 救急車内のタブレット端末から患者情報を大船渡病院へ送信するサービスを開始へ=大船渡市防災センター

 気仙地区内の医療機関などで構成する一般社団法人・未来かなえ機構(代表理事・滝田有気仙医師会長)は、地区内全ての救急車と県立大船渡病院救命救急センターをICT(情報通信技術)で結び、リアルタイムで情報を連携する「救命救急サービス」を11月から開始する。救急車に搭載したタブレット端末などを利用し、搬送中の患者情報を病院へ送信。病院側では正確な情報を把握し、迅速な処置を行うことが可能となる。全国的にも先進的なサービスとなり、本格運用は来年1月からを予定している。

 

情報共有で迅速な処置を、救急車と大船渡病院を連携


 大船渡病院によると、急な病気や容体の悪化、事故によるけがなどにより、救急車で同院に搬送される患者数は平均で1日あたり7件。年間では2600件に上るという。
 これまでは患者搬送中、周囲に本人の症状などが分かる人がおらずに情報を把握しづらい、救急隊側が急な容体変化や傷の状態などを病院側に伝えにくい、緊急度の判定が難しく、重篤な症状を見逃す危険性があるなどの課題があり、治療開始までに時間を要する一因にもなっていた。
 そこで、同機構は昨年から救命救急サービスの導入に向け、本格的なシステム開発に着手。大船渡地区消防組合や同院の医師、救急看護認定看護師からも意見を取り入れ、開始段階に至った。
 このサービスはICTを活用し、救急車で搬送中の患者に関する生体情報(血圧、脈拍、体温など)や画像(患部、事故現場)を大船渡病院側に送ることで、病院側が情報を把握してより迅速かつ適切な処置ができるようになるもの。
 さらに、同機構が進める地域医療・介護連携の情報通信技術システム「未来かなえネット」の登録者であれば、既往歴や薬の処方歴、通院歴などの情報確認も可能。消防庁の基準に従った緊急度判定を用いて患者の緊急度情報をチェックすることで、救急隊と病院がその情報を共有し、重篤症状の見落とし防止にもつながる。
 現在、気仙には大船渡地区に6台、陸前高田市に3台の救急車が配備。同機構では今月中に各救急車へ専用のタブレット端末、車内の生体情報モニターと同院を結ぶノートパソコンを1台ずつ設置する。救急隊が使用するのはタブレット端末のみで、専用のアプリケーションから搬送患者の情報を入力し、病院に送信する。
 同院の伊藤達朗院長は「ICTは生き物。今後発展させ、余計な機能は除くなどニーズに合わせ、常に考えながら利用していかなければ。近い将来には心電図情報の送信もできるようにしたい」と意欲を見せる。
 現在、未来かなえネットには気仙地区内の医療機関や薬局、介護施設など62施設が参加し、気仙の住民約9200人が加入。今後は近隣市の医療機関や東北大学病院などとの連携も準備している。
 伊藤院長は「登録していれば救急の際もある程度の疾患状況を予想でき、対応も違ってくる。救命救急サービスも始まることから、働き盛りの方や子どもも加入し、利用してほしい」と呼びかけている。