木造仮設住宅を再活用、移築し食堂部を増設へ/恋し浜ホタテデッキ

▲ 恋し浜ホタテデッキに移築が進む木造仮設住宅=三陸町綾里

 大船渡市三陸町綾里の「恋し浜ホタテデッキ」で、住田町中上団地にあった木造仮設住宅の移築が進んでいる。食堂部として再利用するもので、中心となって建設を進めている佐藤寛志さん(43)は「たくさんの人に手伝ってもらっている。みなさんの気持ちがこもったものにしたい」と意気込む。佐藤さんと建設に協力する有志らは、年内の完成を目指して作業に汗を流している。

 

年内の完成を目指す

 

 恋し浜ホタテデッキは、同町越喜来のダイビングショップ「みちのくダイビングRias」を営む佐藤さんが中心となって、三陸鉄道恋し浜駅向かいに建設され、平成27年8月にオープン。広々としたデッキと土産物販売やホタテの直売取り次ぎなどを行う店舗が設けられており、同町の漁業者はじめ地元住民、観光客、ボランティアらが集う場として利用されている。
 オープン後、しばらくして佐藤さんが「食事ができる施設を」と、新たに食堂部の増設を構想。当初は店舗に使ったものと同じ木材キッドハウスの購入を考えていたころ、住田町が大震災後に独自で建設した木造応急仮設住宅が目に留まった。
 建設時から国内外の関心を集めていた木造仮設住宅は、世田米の火石、本町、下有住の中上の3団地に93戸が整備され、木造ならではの温かみある住宅は入居者からも好評を得ていた。
 佐藤さんは「木のぬくもりがあり、東日本大震災を忘れないという意味も込めて、可能であれば入居者がいなくなった木造仮設住宅を再利用したい」と住田町に提案。まだ希望者への払い下げが決定していない時期だったが、特例として認められた。
 佐藤さんは当初、2棟を移築して食堂とギャラリーにする予定だったが、老朽化によって解体時に一部の部材が破損したことなどから、2棟分の材料で1棟を建設することとし、余った材料で軒などを設けることとした。
 今夏完成を予定していたが、水道工事や基礎工事の日程がずれ込み、建設が始まったのは9月になってから。建設はすべて手作業で行っており、現在は佐藤さんや地元住民、ダイバーら三陸の海を頻繁に訪れる有志たちが力を合わせ、木材に防腐剤を塗って、建物を組み立てている。
 佐藤さんは「思った以上に時間がかかっているが、いろいろな地方の人たちが手伝いに来てくれているし、少しずつ前に進んでいる。なんとか年内の完成を目指したい」と力を込める。
 内部は食堂のほか、シャワー室を設ける予定。「食堂部ではまず、地元のホタテを使ったメニューを考案していきたい」と話していた。