2017衆院選岩手2区/鈴木氏が組織広げて優位に、畑氏は後継強調し追い上げ
平成29年10月20日付 1面

鈴木俊一氏

畑浩治氏
第48回衆議院議員選挙は、22日(日)の投開票まで2日と迫った。気仙2市1町を含む岩手2区は、届け出順に希望の党元職・畑浩治氏(54)=久慈市=と、自民党前職で公明党が推薦する鈴木俊一氏(64)=山田町=の一騎打ちとなっている。気仙は、小選挙区の区割り改定で新たに2区に編入。6選を果たしてきた民進党前職・黄川田徹氏(64)=陸前高田市=の勇退もあり、両陣営の集票をめぐる動きが激化している。終盤に入り、五輪担当大臣を務め、与党としての実績を強調する鈴木氏が組織に広がりも見せて優位に立ち、黄川田氏の後継として前哨戦段階から浸透を図ってきた畑氏が追い上げる展開となっている。
5年近くに及んだ安倍政権の是非を問う今回の総選挙は、9月28日の衆院解散を受けたもの。「1票の格差」是正を図る区割り改定が適用され、小選挙区は従前の295から289、全国を11ブロックに分けた比例代表は180から176(東北ブロックは14から13)に減り、合計は465議席となる。
旧3区だった気仙2市1町は今回から、盛岡周辺から県北までの内陸部と沿岸部すべての計23市町村でつくる2区となった。加えて、旧3区で連続6選を果たしてきた黄川田氏が勇退し、過去2回は小選挙区での立候補だった大船渡市出身の自民党前職・橋本英教氏(50)=比例東北2期=が比例単独に回り、地元候補不在で今月10日の公示を迎えた。
畑、鈴木両氏の対決は旧2区時代から数えて5度目だが、気仙が戦いの舞台となるのは初めて。平成26年の前回選で、気仙では得票率約60%と圧倒的な強さを見せてきた「黄川田票」をめぐり、前哨戦段階から競り合いを展開しながら最終盤に突入した。
10日現在の岩手2区における選挙人名簿登録者数(在外登録者含む)は、39万3747人(男18万8589人、女20万5158人)。気仙は、大船渡市が3万2297人(男1万5330人、女1万6967人)、陸前高田市が1万7118人(男8259人、女8859人)、住田町が5047人(男2460人、女2587人)。
■畑陣営
当初、民進党の選挙区支部長で4野党統一候補として出馬予定だった畑氏。解散に前後して民進党が希望の党への合流を決めたことにより、希望の公認候補としての出馬となった。
黄川田氏は「若い人に道を譲る。復興の総仕上げは畑氏に託したい」と語り、二人三脚の姿勢を前面に打ち出す。民進で行動をともにしてきた前県議会議長の田村誠県議(大船渡選挙区)が2区全体の後援会連合会長を務め、その後援会(菅生哲修会長)とも連動。民進系の市町議らが下支えする。
公示直前まで、希望への合流をめぐる戸惑いが支持者に見られたが、「いずれにしろ、沿岸部の地域代表として送り出す」(田村県議)と立ち位置を示し、結束を図った。
至上命題は「黄川田票」の確保で、夏ごろから民進の支持母体である連合の「つどい」に参加するなど、気仙での浸透に努めてきた。
公示後も足しげく気仙に訪れ、黄川田氏とともに各市町を細やかに回る。19日夜には大船渡市内で個人演説会を開き、復興完遂などへの訴えを強めた。
与党、現職大臣という相手陣営からの切り崩しは激しく、守勢に回っており、大船渡市と住田町では先行を許している状況で、「相当に厳しい戦い」との見方。支持に厚みがある陸前高田市を足がかりとして最終盤の巻き返しを目指す。
共闘方針だった共産は希望合流を受け、改憲などに対するスタンスの違いから自主投票に転換。陣営では「希望が受け皿になりきれない」との懸念を持ちながらも、これまでの共闘のつながりや非自民の結集に期待を託す。支持政党を持たない浮動層の掘り起こしに、どこまで手を伸ばせるかも鍵を握りそう。
■鈴木陣営
政権与党の実績を強調し、これまで力を入れてきた水産業振興や東日本大震災からの早期復興などを掲げる。漁港検診などを通じて沿岸部を回ってきた経験や、現職大臣としての知名度を生かし、新たに2区となった気仙でも攻勢に出る。
大船渡市では、旧3区から出馬してきた橋本氏を支える党支持者に加え、昨年12月に設立された党職域支部の関係者らも積極的に後押し。今月に入って新たに発足した大船渡後援会の鎌田和昭会長は、前回選は黄川田氏支持だったことを明かしつつ「鈴木氏は、水産業の実情が分かる候補」と訴える。
また、ILC(国際リニアコライダー)誘致に期待する層が、鈴木氏支持に回る動きも。10日に宮古市で行われた第一声には、大船渡市農協の幹部も駆けつけるなど、多方面で浸透をみせる。
陸前高田市と住田町でも、旧来からの自民支持層や両市町を選挙区とする自民会派の佐々木茂光県議の後援会関係者らにとどまらず、一定の手ごたえを寄せる。佐々木県議は「ここに来て推薦状が届くなど、広がりはある。ただ、黄川田さんが『今度だけは畑さんを』と回っており、簡単にはいかない」と語る。
また、支援市議からは「地域を挙げた熱気がある宮古や山田に比べれば、気仙は冷めている感がある。票の動きが見えにくく、楽観できない」といった声も。
19日は陣営の選車が気仙に入り、支援市議らが同行しながら地域回りを重ねた。早期復興を今選挙の第一義とする住民や無党派層の取り込み、比例東北ブロックで改選前の2議席維持に懸命な公明党支持層との連動をさらに広げていけるかが、最終盤のポイントとなりそうだ。
■比例代表
岩手を含む東北ブロック(定数13)には、8党1団体の67人が立候補。比例単独が21人で、小選区との重複は46人となっている。
各政党の得票数に応じ、あらかじめ登載された名簿の順位で当選者が決まる。小選挙区の立候補者も重複して登載でき、小選挙区で落選した場合でも、当選者の得票にどれだけ迫ったかという惜敗率によって比例代表での復活当選が可能となる。
岩手2区の畑、鈴木両氏は重複立候補で、それぞれ名簿2位。気仙関係ではこのほか、自民党前職・橋本氏が比例単独で立候補。名簿順位は25位。いずれも重複で名簿2位となっている同党選挙区23候補の情勢が、当落を分ける大きな要素だ。