超大型の台風21号 市民生活や産業に影響、人的被害の情報なし(別写真あり)/気仙

▲ 台風21号の接近による倒木で民家の屋根が破損=大船渡市赤崎町
陸前高田の名産であるリンゴも、多くの果樹園で落果被害を受けた=陸前高田市米崎町

陸前高田の名産であるリンゴも、多くの果樹園で落果被害を受けた=陸前高田市米崎町

 超大型の台風21号が気仙地方に接近した23日、各地は大荒れの天気となり、大船渡市では30㍍を超える日最大瞬間風速を観測するなど非常に強い風に見舞われた。人的被害はなかったが、強風により倒木や収穫期を迎えたリンゴなどの落果、建物の損壊といった被害が発生。3市町の各学校は休校措置がとられ、交通機関も運休となるなど、市民生活や地域産業に大きな影響を及ぼした。

 

 台風21号は日本列島を縦断するように進み、気仙では22日深夜〜23日にかけて大荒れの天気に見舞われた。その後、台風は同日午後に温帯低気圧へ変わった。
 23日の日最大瞬間風速は、大船渡市で30・3㍍、陸前高田市で23・8㍍、住田町で17・9㍍。日最大風速も強く、このうち大船渡市の18・4㍍は10月として3位、通年でも5位の記録だった。
 22、23両日の48時間降水量は大船渡市が66㍉、陸前高田市が62㍉、住田町が81・5㍉。同町では1時間当たりで最大11・0㍉と、やや強い雨が降る時間もあった。
 気仙両市には22日午後6時36分、住田町には23日午前0時47分に暴風警報が発表。同日午前4時18分には大船渡市に大雨、洪水、陸前高田市に大雨の各警報が発表されたが、同6時58分にいずれも注意報に切り替わった。暴風警報は住田町で午後2時48分、気仙両市で同8時32分に強風注意報となった。


倒木で一時通行止めも/大船渡

 

 大船渡市では22日午後5時、市内全域に避難準備・高齢者等避難開始情報を出し、市内11地区に避難所を開設。23日正午の解除までに、大船渡、赤崎、立根の3地区に合計8人が避難した。
 市内の小中学校は同日、学習発表会や文化祭の振替休日だった。大船渡、大船渡東の各高校、気仙光陵支援学校はいずれも休校措置を取った。
 市によると、人的被害の情報は入っていないが、同日は倒木など各地で風の被害が相次ぎ、雨による道路の冠水などもあった。
 赤崎町長崎地内では、強風で倒れた木が民家の屋根を破損。猪川町の長洞応急仮設住宅団地では、風で飛ばされたごみステーションが車両に衝突した。
 末崎町の碁石海岸ではキャンプ場の旧管理棟付近で高さ10㍍余りのマツが根元から倒れ、県道碁石海岸線をふさいだ。市道蛸ノ浦合足線でも倒木が発生し、各線は一時通行止めとなったが同日中に復旧した。


収穫期のリンゴに落果等の被害/陸前高田

 

 陸前高田市では23日午前6時55分、市内10カ所に避難所を開設。2世帯2人が避難したが、同午後0時13分、災害発生の可能性が低くなったため閉鎖した。この日、市内の小中学校と高田高校は休校となった。
 道路は、竹駒町字上壺の玉乃湯へ通じる林道野杉雷神山線など、市内11カ所で倒木被害があり一時通行できない場所もあったが、同日のうちに復旧。冠水による大きな支障は見られなかった。市には人的被害、住居の被害の報告は入っていないという。
 一方、小友町字西下の県道38号大船渡広田陸前高田線(アップルロード)沿いにある仮設のクリーニング店は、プレハブの建物が横転する被害を受けた。この店を経営する同町の石川勝弘さん(71)によると、23日午前6時過ぎに近所の人から知らせを受けて店へ駆け付けたところ、入り口を下にして市道にはみ出す形で建物が倒れていたという。看板や窓ガラスの一部などが割れており、復旧には数日を要する見込みだ。
 農業では、収穫期を迎えているリンゴに大きな影響があった。暴風による落果が最も多く、「量は想定の範囲内」と話す農家もいる一方、米崎町字高畑には、実が落ちただけでなく果樹が20本余り倒れた農園も。この家の人は「これから収穫になる高級な品種がかなりダメになった」と話し、後片付けに追われた。


五葉地区で屋根破損被害/住田

 

 住田町は22日午後8時、町内全域に避難準備・高齢者等避難開始情報を出した。2世帯計4人が避難し、このうち1世帯が同日夜から町役場に宿泊。もう1世帯は、23日午前に上有住地区公民館で過ごした。
 町内各小学校は21日に学習発表会、中学校は22日に文化祭があったため、23日はいずれも振替休日。住田高校は休校措置が取られた。
 人的被害はなかったが、五葉地区内で建物のトタン屋根が一部破損。上有住・坂本地域の町道で、倒木被害がみられた。


公共交通も運休/両市では停電も

 

 三陸鉄道南リアス線(盛─釜石)、JR大船渡BRT(盛─気仙沼)、気仙3市町を走る県交通の路線バスは23日、始発から運転を見合わせた。
 同南リアス線は上下10便、BRTは同36便が運休。どちらも同日午後2時30分ごろから運行を再開した。
 路線バスは、一部区間で倒木や冠水のため終日運休したところもあったが、ほとんどの区間は同日午後1時30分ごろから通常運行を開始。
 24日は鉄道、バスのいずれも、全区間で始発から通常通り運行した。
 気仙両市では、23日の明け方ごろから停電が相次いだ。東北電力によると、大船渡市大船渡町、猪川町、三陸町、陸前高田市高田町、竹駒町、米崎町、横田町、矢作町、広田町の延べ5935戸が停電した。
 強風で配電線に樹木や飛来物が接触したり、倒木で断線したことなどが原因。同日午後5時12分までに全て復旧した。