保全・活用の広がり期待、まち家世田米駅の蔵安全確保策で竹囲い設置へ(別写真あり)

▲ 落下の危険がある壁を除去したあと、竹囲いを設置する計画=まち家世田米駅

 住田町住民交流拠点施設・まち家世田米駅の蔵1棟で24日、来訪者の安全確保に向けた作業が本格化した。落下の危険がある壁部分をはがす作業は今月末まで行われ、竹囲いの設置や今後の修繕に向けた調査・検討も予定。関係者は公開で進めることで、住田が誇るべき蔵並みの保全・活用に向けた住民意識醸成に期待を込める。
 まち家世田米駅として利用されている旧菅野家住宅および土蔵群計6棟は今年、国の登録有形文化財(建造物)に指定された。世田米の景観を象徴づける主屋は構造や部材を生かし、レストランや地区公民館として利用され、交流人口増につながる拠点となった。
 敷地内にある蔵4棟のうち1棟は現在、ギャラリーとして利用されている。残りの3棟のうち主屋に隣接する1棟は、壁と屋根瓦の境界部分にあたる「鉢巻(はちまき)」と呼ばれる部分が広く、蔵としての格の高さを示しているとされる。
 その一方、壁部分の傷みが進み、蔵の間を通る来訪者の安全対策が課題となっていた。安全対策は町による事業で、24日は江州左官・土舟の小林隆男さん(56)=滋賀県守山市=らが、竹囲いを制作。蔵では作業用の足場が設置された。
 落下の危険がある壁部分の撤去終了後も、竹囲いは設置され続ける。まち家世田米駅は地元の子どもたちも多く利用している中、今後は花飾りを施すなど、自由なアイデアを反映させたい考え。
 小林さんは「『何か違うことをやっている』ということをアピールしていきたい。蔵を直すことが目的ではなく、蔵並みがある町全体を良くしていくために考える起爆剤となれば。作業を目にすることで、子どもたちをはじめ住民のアイデアが生まれる流れになってほしい」と話す。
 23日は、施設を利用する世田米小、中学校生計8人が、土団子づくりに参加。25日以降も成形作業を行うなど、継続的に土にふれる機会をつくり、蔵への関心を高めていく。
 町は29日(日)に役場で開かれる町産業まつりでも、子どもたちに蔵の材質にふれてもらおうと土団子づくりを企画。相談会も開催し、小林氏に加え、まち家世田米駅の蔵改修時に指導にあたった薩田英男氏(建築家、㈲薩田建築スタジオ代表)、近畿大学建築学部助教の山田宮土理氏がアドバイスする。