注目の〝大船渡決戦〟始まる、将棋界最高峰のタイトル争う/竜王戦第2局(別写真あり)

▲ 初手「☗7六歩」を打った渡辺竜王

 東日本大震災の被災地を舞台に、将棋界最高峰のタイトルを争う大一番が始まった。渡辺明竜王(33)に羽生善治棋聖(47)が挑戦する第30期竜王戦七番勝負の第2局が28日、大船渡市盛町のリアスホールで開幕。羽生棋聖が先勝して迎えた〝大船渡決戦〟は、羽生棋聖が連勝して勢いに乗るか、タイトル防衛を目指す渡辺竜王がタイに戻すか、七番勝負のすう勢を占う大注目の対局だ。羽生棋聖は今期、将棋界初の大偉業となる「永世7冠」に挑んでおり、全国の将棋ファンが本局の勝敗の行方を注視している。

 

 羽生棋聖 両雄激突 渡辺竜王

 

「☖8四歩」と応じた羽生棋聖

 

 第2局の対局室は、平成25年の王将戦第3局と同じリアスホールの和室に設けられた。
 第1局を制した羽生棋聖は、これまでに竜王位を通算6期獲得しており、「永世竜王」に王手をかけている。永世の称号がある7大タイトルのうち、すでに竜王を除く6タイトルで永世称号を手にしており、今期竜王戦は前人未踏の「永世7冠」を懸けた戦いとなっている。
 一方、渡辺竜王は、9連覇を含む通算11期でタイトルを保持しており、今回は自身2度目の3連覇がかかっている。
 午前8時45分ごろ、羽生棋聖が対局室に入場すると、ほどなくして渡辺竜王が姿を現した。いずれも羽織はかまの正装で、しわぶき一つ上がらない静かな対局室は張り詰めた空気に包まれた。
 立会人の屋敷伸之九段の声がけで、定刻の午前9時に対局開始。先手の渡辺竜王が初手で「☗7六歩」と指し角道を開けると、後手番の羽生棋聖が飛車先を突く「☖8四歩」と応じ、決戦の火ぶたが切られた。
 指し手は序盤から両者とも小考を繰り返し、ゆっくりしたペースで進む。羽生棋聖は10手目で「☖4四歩」で角道を止め、角交換を拒否。プロの間で見直しが進んでいるという戦法の「雁木(がんぎ)」を指向する。両者とも静かに駒組みを進め、羽生棋聖が32手目で「☖5三銀」と指したあと、渡辺竜王が長考。そのまま昼食休憩に入った。
 休憩後、午後1時30分に対局が再開。渡辺竜王が「☗7九玉」と打つと、羽生棋聖は「☖6二飛」と6筋に飛車を振った。
 このあと、数手進むが、渡辺竜王が「☗4六角」とすると、羽生棋聖が長考。さらに数手後に中盤戦に突入するが、午後6時に渡辺竜王が49手目を封じて1日目を終えた。
 2日目の29日は、午前9時に対局が再開される。午前10時からは、リアスホール大ホールで大盤解説会が開かれる。入場料は大人2000円、小学生以下1000円。

 

 対局者囲んで前夜祭

 

渡辺竜王(右端)と羽生棋聖(左端)に歓迎の花束を贈呈=大船渡プラザホテル

渡辺竜王(右端)と羽生棋聖(左端)に歓迎の花束を贈呈=大船渡プラザホテル

 竜王戦第2局の前夜祭は27日夜、大船渡市の大船渡プラザホテルで開かれた。両対局者のほか、主催関係者や気仙内外の将棋ファンら約120人が集まり、大船渡での大一番開催を祝った。
 渡辺竜王はあいさつで「大船渡では(平成25年の王将戦で)一度対局を行っているが、そのときは負けてしまった。同じ土地で2連敗はしたくないし、『さすが竜王戦だ』と地元のファンに喜んでもらえる将棋を指したい」と抱負。
 羽生棋聖は「岩手は何度も来たことがあるが、大船渡は初めて。将棋のいいところは、小さな子どもから年配の方まで、幅広く楽しんでもらえること。将棋の楽しさを伝えられるように打ちたい」と語った。
 両対局者が決戦に備えて退場したあと、正副立会人の屋敷伸之九段と飯塚祐紀七段が第2局の見どころを解説したほか、プロ棋士らによるチャリティー指導対局で集まった支援金の贈呈式も行われた。