羽生棋聖〝大船渡決戦〟制す、第30期竜王戦第2局(別写真あり)
平成29年10月31日付 7面

渡辺明竜王(33)に羽生善治棋聖(47)が挑む第30期竜王戦第2局2日目は29日、大船渡市盛町のリアスホールで指し継がれた。前人未到の「永世7冠」を目指す羽生棋聖が128手で渡辺竜王に勝ち、対戦成績を2勝とした。この日は大ホールで大盤解説会も開かれ、気仙内外の将棋ファンが熱い〝大船渡決戦〟の行方を見守った。
「永世7冠」に前進/渡辺竜王に2連勝
この日は、両対局者が入室したあと、前日に指された48手目までを再現。午前9時に立会人の屋敷伸之九段が渡辺竜王の封じ手を開けて「6六同金です」と読み上げ、対局が再開された。
羽生棋聖は「△6四銀」。これ以降、局面は膠着(こうちゃく)気味となるが、羽生棋聖が66手目に「△7七桂打」の絶妙手を放つと、戦況を見つめていた将棋ファンからどよめきが起こった。
この一手を受け、渡辺竜王が1時間に及ぶ長考の末、「▲4五桂打」とした。以降、昼食休憩を挟んで6、7筋の攻防が続いたが、羽生棋聖が「△6九飛成」と一方的に飛車を成り込んだ。
このあと「▲7八銀打」「△4九竜」「▲5七銀」「△6四桂打」と進んで激戦となったが、戦局は後手の羽生棋聖有利に。渡辺竜王も反撃に出たが、110手目の「△5七竜」で羽生棋聖が金銀7枚を手にするなど大きく差を広げ、午後6時22分、渡辺竜王が投了した。
終局後にインタビューに応じた羽生棋聖は「序盤は失敗したのではないかと思い、少し苦しいかと思って打っていた。(7七桂は)他の手では(攻めが)切れそうだったので、仕方ないかなと。終盤に7九竜と回って駒が取れる形になったので、良くなったかと思った。(第3局は)自然体で、いつもと同じように対局を迎えられたら」と話した。
一方、2連敗となった渡辺竜王は「序盤が守勢になって面白くない将棋になってしまった。7七桂は想像よりも厳しい手だった。この2局は内容も良くないので、もう少しマシな戦いをしないといけない」と巻き返しを誓っていた。
両日とも、両対局者に出されたおやつは地元の名菓。控え室などで対局を見つめていた関係者らも大船渡の味に舌鼓を打っていた。
また、この日は、大ホールで大盤解説会が行われ、県内外の将棋ファンら255人が来場。大きなスチール製のマグネット盤のほか、それを映し出す大スクリーン、対局を中継する二つの小さなスクリーンが用意されたステージ上には、本田小百合女流三段と金井恒太六段、立会人の屋敷九段、飯塚祐紀七段が入れ替わり登場し、両対局者の読み筋や形勢をさまざまな角度から検討していた。
来場者は熱戦を見守りながら、解説に聞き入ったり、知り合いと次の展開を予想し合うなど、トップ棋士による大勝負の醍醐味(だいごみ)を堪能。終局後、両対局者がステージに登場すると、大きな拍手で両者の戦いをたたえていた。
東京都から訪れた小佐野裕さん(70)は「羽生さんのファンで〝追っかけ〟をしている。好勝負と羽生さんの勝利を期待して、東京から6時間かけて来た。帰りにお土産を買って帰りたい」と戦況を見つめていた。
竜王戦第3局は11月4(土)5(日)の両日、群馬県前橋市の「臨江閣」で行われる。