高田東中が「金賞」の栄誉、本年度グッドデザイン賞に/陸前高田市(別写真あり)

▲ 本年度のグッドデザイン賞に輝いた高田東中学校=米崎町

 公益財団法人日本デザイン振興会が毎年、工業製品をはじめ、住宅・建築物、各種のサービスやソフトウェア等の優れたデザインに授与する「グッドデザイン賞」のうち、一級建築事務所㈱SALHAUS(東京都)が手掛けた陸前高田市立高田東中学校の建築が、大賞に次ぐ栄誉となる金賞(経済産業大臣賞)を受賞した。土地の形状を生かしながら、立体的で開放的な学校建築を実現したこと、コミュニティー拠点や避難所としての機能を併せ持っていることなどが高く評価されると同時に、地元住民との綿密なやりとりの中からデザインが生まれた点にも称賛が集まった。

 

東京のSALHAUS設計

 

 グッドデザイン賞は、昭和32年に当時の通商産業省(現・経済産業省)が創立した「グッドデザイン商品選定制度」を継承し、平成10年から日本産業デザイン振興会が主催。工業製品からビジネスモデル、イベントなど幅広い領域を対象とし、「よいデザイン」を顕彰することにより、社会全体をより豊かなものへと導く、総合的なデザイン推奨制度となっている。
 今年は過去最多となる4495件の応募があり、1403件が受賞。このうち高田東中は大賞候補7件のうちの1件に選出された。この後、10月に一般投票が、今月1日に大賞候補者らによるプレゼンテーションが行われた結果、惜しくも大賞は逃したが、社会課題に対する取り組み、将来への提案性や完成度の高さなどを総合的に判断し、審査委員会が「本年度もっとも優れている」と評価したデザインに贈られる「金賞」を獲得した。
 高田東中は、東日本大震災で被災した広田中、小友中、米崎中が統合し、25年4月に開校。新校舎は26年から整備を開始した。SALHAUSは、共同代表の安原幹さん、栃澤麻利さん、日野雅司さんが、子どもたちと地域住民を交えたワークショップなどを開催して意見を聞き取り、「災害復興のシンボルとして、地域とともにつくりあげた『居場所』になる中学校」をテーマに設計を手掛けた。
 もとは段々畑だった斜面地を生かし、校舎の1階と2階をひな壇状に設けた上に、気仙大工の伝統的な建築を思わせる大屋根をかけた開放的なデザイン。天井や柱には気仙スギが用いられ、ぬくもりのある仕上がりとなっている。
 図書室や多目的ホール、特別教室など、地域開放を想定した諸室は2階に配置。「子どもたちがのびのび運動できるよう、校庭やテニスコートをできるだけ大きく」「どこにいても海が見えたら」といった要望も取り入れた。
 さらに、体育館での避難所生活を体験した住民たちの声が随所に生かされている。支援物資を搬入しやすいよう体育館に車を横付け可能にしたり、乳幼児を持つ母親や急病人が使えるよう、体育館に小会議室を併設するなどしたのも、そうした声から生まれたアイデアだ。
 復興の〝スピード〟が重視される中、住民とともに議論を重ね、地域の思いを見事にデザインへ反映させたことなど、審査員たちは「設計のプロセス(過程)」も高く評価。
 過去のグッドデザイン賞をはじめ、さまざまな建築コンクールで多数の受賞歴を誇る同社だが、「ここまで丁寧に住民の方とやりとりしたのは初めてに近い」と栃澤さん(43)はいう。
 生徒や住民の〝居場所〟をつくることは大きなテーマの一つだったといい、校内には人々が数人、あるいは大勢で「過ごせる」場所が大小いくつも存在する。栃澤さんはこうした点を実現できたことや、「皆さんと一緒につくりあげた学校を評価していただいたことがうれしい」と語り、生徒や住民から高田東中が愛され続けていくことを願っている。