気仙大工の技 後世に、有志が「考える会」設立へ
平成29年11月9日付 7面
江戸時代が発祥とされ、優れた技能で現代まで高く評価される「気仙大工」。一方で後継者不足をはじめとして継承を取り巻く環境は厳しさを増しており、気仙地区内の有志たちが「気仙大工の復権と未来を考える会」(仮称)の立ち上げ準備を進めている。12日(日)に大船渡市大船渡町の大船渡プラザホテルで設立総会や記念講演を開き、活動を本格化させることとしており、法人、個人の賛同者を募っている。
12日に設立総会と記念講演
気仙大工は、陸前高田市小友町が発祥の地とされる出稼ぎの大工集団。藩政時代から「南行き」と称して岩手県南、宮城県北を中心に活動し、明治期の東北本線開通以降は関東地方や北海道などへ範囲を広げていった。
家大工でありながら神社仏閣などの堂宮建築も手がけ、さらには建具や彫刻までもこなす技量を持ち合わせているのが特徴。普請した建築物としては、定義山西方寺の山門(宮城県仙台市)や国指定重要文化財の登米高等尋常小学校校舎(同登米市)、国指定史跡の有壁本陣(同栗原市)などが名高く、地元気仙では大船渡市日頃市町の長安寺山門や陸前高田市米崎町の普門寺三重塔も手がけた。
しかし、近年は大工職の後継者不足や住宅建築様式の移り変わりなどもあり、その優れた技術の継承に向けた環境は厳しさを増している。東日本大震災津波では吉田家大肝入屋敷(陸前高田市気仙町)など、代表的な建築物の被災もあった。
震災を機として地域の産業経済を取り巻く環境も変化する中、継承への危機感を強めた有志たちが「地域にとって歴史と伝統に裏打ちされた気仙大工という揺るぎない存在に、いまこそ新しい風を吹き込み、新たな再生・復権の道を模索することが、地域に生きる我々の責務」と、「考える会」の設立準備委員会(委員長・菊池喜清㈱菊池技研コンサルタント取締役会長)を立ち上げた。
気仙大工の復権に向け、伝統技術の承継・新時代技術の融合、偉業の認識と保全・活用、人材育成、関連職種交流といった事業の展開を描く。現段階で120ほどの個人、法人が賛意を示しているといい、さらに輪を広げたい考えだ。
設立総会は12日午後1時30分から。終了後の同3時30分からは記念講演会を開催。40年以上にわたり気仙大工の研究を重ねてきた高橋恒夫東北工業大名誉教授が「日本建築の特異性と在方集住大工」と題して登壇する。一般の聴講も呼びかけている。
問い合わせは、設立準備委事務局(℡22・7385)まで。