ILC誘致 市民レベルでも、組織化も見据え勉強会/陸前高田

▲ ILCの波及効果などについて話す佐々木室長=陸前高田市コミュニティホール

 陸前高田市高田町の市コミュニティホールで9日夜、岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)について理解を深めようという、「ILCを知ろう 陸前高田市民勉強会」が開かれた。誘致推進に向けた市民レベルの組織結成も目指し、同市議ら有志の呼びかけで初めて行われたもの。県政策地域部科学ILC推進室の佐々木淳室長を講師に、世界最先端となる施設の役割や波及効果について興味深く聞き、まちの将来像を描くヒントとした。

 

市議ら呼びかけ、地域への波及効果など聞く

 

 国際的な施設のILCは、地下に直線状のトンネルを掘り、そこに設置した加速器を用いて素粒子の電子と陽電子を超高速で衝突させることで宇宙誕生直後の状況を再現し、宇宙や物質の起源を探ることなどが目的。
 関連国の政府なども負担する建設費は約1兆円と巨額で、この削減へ31〜50㌔とされてきた加速器用トンネルを20㌔に縮小し、段階的に整備・運用していく案が検討されており、10日までに物理学者らの国際会議で了承されたという。
 誘致が実現すれば、建設期間を含む20年間での経済効果は4兆5000億円、25万5000人の雇用が生まれるという試算があり、国内外の研究者の移住、研究施設周辺への関連企業立地、港湾を活用した関連資機材運搬なども見込まれる。
 陸前高田にとっては、長年の課題となっている一関市を結ぶ国道343号の改良をはじめとした地域課題解決や、地域振興の起爆剤としての期待も高まる。こうした中での勉強会は、誘致実現に向けた市民レベルの協力体制構築も視野に、鵜浦昌也、佐々木一義、福田利喜各市議が呼びかけ人となって初めて開いたもの。
 市民ら約40人が参加。呼びかけ人を代表して鵜浦市議が「実現したら陸前高田にどのような恩恵があるか、市民、県民としてやれること、すべきことは何かを皆さんと一緒に考えていければと、企画させてもらった」とあいさつした。
 引き続き佐々木室長がILCの概要、誘致が実現した場合の地域との関係、建設候補地がすべきことの3点に主眼を置いて講話。
 また、既存類似施設の状況をもとにしながら、ILCには6000〜7000人がかかわり、その半数が多国籍の外国人で、「ミニ地球儀のような空間が陸前高田のすぐそばにできる」と例え、「カキなど岩手のおいしさを売り込む海外マーケットをここらから築く可能性も出てくる」と話した。
 研究者の年齢は20〜30代が中心といい、「何もしなければ(東北最大都市の)仙台に住む人が多いと思われる。研究所ができるのを見るだけでなく、これをどう活用するかという視点を持ち、彼らが年齢を重ねた時、また岩手に行こう、住みたいという環境をつくれるかも勝負になってくる」と、地域の取り組みにも期待を寄せた。