一貫システムで再造林促進を、低コスト化見据え現地検討会/住田町(別写真あり)

▲ コンテナ苗を使った植栽を体験する参加者=住田町

 林野庁東北森林管理局三陸中部森林管理署と県沿岸広域振興局、大槌・気仙川流域森林・林業活性化センターによる「一貫作業システム現地検討会」は15日、住田町内で行われた。林業収益性の悪化などを受け再造林率は低迷が続き、低コスト化が求められている。参加者は伐採から植栽まで同一事業体が担う方式の有効性を探ったほか、町内でも生産拡大が進むコンテナ苗にも理解を深めた。

 

コンテナ苗などで効率化

 

 人工林が本格的な利用期を迎え、適切な主伐・再造林推進の重要性が高まっている。しかし、再造林は「森林・林業のまち」を掲げる住田町にとっても、重い課題の一つ。町内私有林の再造林率は22%と、県平均の30%を下回る。
 同管理署では昨年度から、一貫作業システムの取り組みを始め、作業現場での導入や実証を重ねている。現地検討会は県や市町担当者、大股・気仙川流域の林業事業体担当者を対象とし、低コストでの再造林推進が目的。町内外から約50人が参加した。
 説明は、世田米小股の国有林内で行われた。管理署は、森林環境保全整備事業として一貫作業を発注。同町の㈲佐藤木材(佐藤太一代表取締役)が請け負い、カラマツやアカマツなどを伐採・造材するほか、新たにコンテナ苗でカラマツの植栽整備を進めている。
 冒頭、同管理署の畠沢重年署長は「木材を育て、販売して収入を得ることで、地域が豊かになっていくには創意工夫が必要」とあいさつ。現地説明に加え、重機作業の実演が行われた。
 現地説明によると、一貫作業では主伐から植え付けまでの作業を同一事業体が担う。より効率的な作業体制づくり、伐採・搬出機械を活用することで造林時に必要な「地ごしらえ」や植栽時の経費低減を図る。伐採機械の待ち時間を利用して枝葉の整理を行うなど、従来の人力による地ごしらえ作業を省き、コスト削減につなげる。
 コンテナ苗は専用容器で育て、均一的な形状の根鉢であるため、専用器具で根に土がついたまま簡単に植栽ができる。時期も普通苗は春先と秋に限られていたが、コンテナ苗は春〜秋に可能。通常の苗に比べて取引価格はまだ高い半面、植栽が簡単にできるといった利点もあり、全国的に普及拡大が注目されている。
 今回使用した苗は、下有住にほ場を構える吉田樹苗(吉田正平代表)が生産。町内では国などの補助事業を生かし、育苗施設整備などコンテナ苗生産拡大の動きが広がる。
 検討会現場では、参加者が実際に植栽を体験。林業従事者からは、一貫作業による経費軽減は地理的条件によっても大きく変わってくるとの指摘があった一方「コンテナ苗の方が、作業能率は上がる」などの声が聞かれた。
 管理署では今後、全事業で原則的にコンテナ苗での植栽を進める方針。一貫作業に関してはさらに下刈り作業のあり方も含めて試行錯誤を重ね、低コスト化につながる動きを広げることにしている。