貴重な船大工技術で認定、海・川の名人/大船渡・気仙船匠会の新沼さん

▲ 本年度「海・川の名人」に認定された新沼さん=リアスホール

 公益社団法人全国漁港漁場協会による平成29年度「海・川の名人」に、気仙船匠会会長の新沼留之進さん(87)=大船渡市大船渡町=が認定された。認定証の伝達が23日、盛町のリアスホールで行われ、新沼さんは「今後もできる限り地域の役に立ちたい」と気持ちを新たにした。
 「海・川の名人」は、海や川にかかわるなりわいや地域生活に染み込んだ営為のうち、日本列島の多様な自然と対応する優れた知恵や技でその業をきわめ、地域の生活者や他の技術・技能者の模範となる達人たちを選定するもの。平成22年度から行っており、28年度は気仙地域から漁具鍛冶をなりわいとする3人が認定を受けた。
 本年度は全国から、海15人、川17人の合わせて32人を名人に認定。岩手からは新沼さんら2人が選ばれた。
 大船渡出身の新沼さんは、地元の尋常高等小学校を卒業後、15歳で船大工の道に進んだ。造船所での修業後に独立し、「かっこ船」と呼ばれる小型の磯舟や中型漁船、遠洋漁業用となる大型船の製造、修理、大型木造船の建造に携わった。
 同2年には、大船渡商工会議所が中心となって江戸時代の大型木造帆船・千石船の復元建造が呼びかけられ、新沼さんら船大工有志が「気仙船匠会」を組織。新沼さんは会長、棟梁を務め、「気仙丸」や「みちのく丸」など4隻を建造した。
 船大工として、地域の漁業を支えてきたのはもちろん、貴重となる昭和初期の大型船建造や千石船の復元などを多数経験。船大工による昔ながらの技術を今に伝えている。
 認定証の伝達は、同会議所による優良従業員表彰の場で実施。新沼さんには、推薦者の齊藤俊明同会議所会頭から認定証が手渡された。
 新沼さんは「うれしいといえばうれしいが、自分の能力から考えると大変恥ずかしく思う」と話し、「個人にではなく、先人や先輩方からの指導があって今があることに対しての認定。今後もできる限り、地域の役に立ちたい」と意欲を見せていた。
 「海・川の名人」は、全国の高校生が名人らから知恵や技術、生き方などを取材し、その成果を発信する「聞き書き甲子園」とも連携。同甲子園には大船渡東高校2年の大坂あゆみさんが参加し、新沼さんを取材した内容を来年3月、東京で発表する予定となっている。