最新デジタル機器を導入、不感海域など解消し全エリアで通信可能に /大船渡漁業用海岸局

▲ 海岸局に導入された最新機器=末崎町

 気仙郡漁業協同組合連合会(庄司尚男代表理事会長)が運営する大船渡市末崎町の大船渡漁業用海岸局(遠野紳哉局長)が最新のデジタル通信機器を導入し、12月10日ごろに運用を開始する。これまで地形の影響で感度の悪かったエリアや不感海域が解消され、同局全エリアで通信が可能となる。災害時でも常時、漁船と連絡を取り合うことができるため、地域の防災・減災の一助となることも期待される。

 

来月上旬に運用開始、地域防災力向上にも一役

 

 同海岸局は昭和27年、大船渡町丸森地内に設置され、平成14年に末崎町上山地内に移転。漁業無線を通じて、出漁漁船の人命・財産を保全するため、気象・航行安全情報を提供し、漁獲向上につながるよう水温や漁況情報も伝えている。
 災害発生時の遭難通信や緊急通信、非常通信の手段としても有効な手段となっており、23年の東日本大震災の際にはライフラインが寸断された中で、沖合に避難していた漁船と連絡を取り合い安否を確認するなどした。

今出山に建設された中継局=大船渡

同海岸局では、北は大槌から山田沖、南は金華山、沖合は30〜40海里まで通信できるが、リアス式海岸特有の入り組んだ地形の影響で、既存の設備では綾里崎より北側で湾内に近づくほど感度が悪くなっていた。
 それらを解消するため、水産庁の「平成29年度強い水産業づくり交付金事業」を活用。古野電気㈱(本社・兵庫県)が開発した最新のデジタル機器を導入し、今出山(756㍍)の山頂付近に中継局を設置した。総事業費は5320万円で、補助額は2分の1。
 中継局のアンテナ鉄塔の高さは約15㍍。同海岸局からリモート操作し、音声通信や文字放送通信を行う。現状の不感海域を解消し、カバーエリアすべてが通信可能となる。
 また、音声に加えてデータでの通信も可能となることから、海上で事故が発生した場合にも迅速に対応でき、気象情報なども全エリアに伝えることができる。
 同海岸局所属船は現在約200隻。このうち震災後に新造した漁船など合わせて約100隻は最新の漁業無線機を搭載しており、船上で緊急事態が発生した際、緊急ボタンを押すことで船名・緯度経度を含む情報が海岸局に送信される。
 この情報をもとに周囲の船舶や海上保安庁へ支援要請を行うことで、より素早い対応が可能となる。災害時には、地震による津波警報などを海岸局から操業中の船舶へと音声と文字で送信できる。今後、漁船側での機器普及が進んでいけば、システムをフル活用できるようになる。
 遠野局長は「感度の悪い地域の方々からは長年、改善してほしいという声があったが、今出山に中継局を設置することで、すべてのエリアでやりとりができるようになった。今後、なおいっそう安全・安心操業に携わっていきたい」と話している。