復興工事の過重労働解消取組、関係者会議で検証結果報告/大船渡(別写真あり)

▲ 「気仙宣言」に基づく取り組みの効果検証結果が報告された会合=シーパル大船渡

気仙宣言「役だった」8割

 

 復旧・復興工事での労働災害や過重労働を防ごうと気仙地区内の行政機関や建設業者らが今年2月に組織した、「気仙地域建設工事関係者連絡会議」の本年度第2回会合が29日、大船渡市盛町のシーパル大船渡で開かれた。席上、過重労働解消に向けた「気仙宣言」に基づき、8〜10月にかけて実施した取り組みの効果検証結果が報告され、請負金額20億円以上の大規模現場などで、月1回以上の土曜閉所(日曜日以外の現場全休日)や定時退社の回数が前年に比べて増えるといった成果があり、気仙宣言について「役だった」とする回答が8割以上だったことなども示された。

 

 同会議は、大船渡労働基準監督署(熊谷久署長)が公共工事発注機関や警察、建設業関係団体などに呼びかけて立ち上げたもので、現在は25者で構成。
 安全・衛生管理を連携して統一的に推進するとともに、復興関連工事で過重労働による犠牲者が出たことを受け、昨年に大規模工事受発注者で採択した「気仙宣言」のさらなる浸透などを目指し、同宣言に基づく月1回の土曜閉所や月1回以上の定時退社などの効果検証、「気仙地域ゼロ災の日」とした毎月10日の現場パトロール実施、気仙労災防止へ向けた現場での危険箇所や安全確保の「見える化」などに取り組んでいる。
 この日は23人が出席。各構成員が工事の発注・進ちょく状況、労災防止や過重労働解消に向けた取り組みなどを報告したあと、労基署が気仙宣言の取り組みの効果検証結果(速報)について説明した。
 効果検証は▽月1回の土曜閉所▽月1回以上の定時退社▽時間外・休日労働が月80時間超の労働者数――を指標とし、8月から10月にかけて気仙地区内13の大規模現場と、8の中小規模現場などを対象に、気仙宣言採択後の昨年同期に実施したものと比較してある。
 それによると、大規模現場での土曜閉所回数は、8月は前年の36回に比べ今年は40回、9月は前年10回に対して今年13回、10月は前年12回に対して13回と増えた。定時退社も、前年同期比で8月が24回から31回、9月が16回から32回、10月が17回から33回と増えている。
 過労死ラインとされる時間外・休日労働が月80時間超の労働者数は、8月(前年1人)と9月(同4人)がゼロとなり、10月は前年、今年とも1人となった。
 中小規模現場は土曜閉所が8月で34回(前年比4回増)、9月は7回(同2回増)、10月は前年と同じ6回。定時退社は8月が52回(同2回増)、9月は53回(同9回増)、10月は51回(同10回増)。月80時間超の労働者は前年、今年ともゼロだった。
 気仙宣言が過重労働解消に役立ったかについては、大規模、中小規模とも「非常に思う」と「思う」の回答が合わせて8割以上となった。効果的だった取り組みとして、土曜閉所をあげる現場が目立った。課題としては、慢性的な人手不足と書類の簡素化が前年に続き多くあがった。
 岩手労働局の川上明過重労働特別監督監理官も出席。労働局では今年7月、気仙宣言を「いわてリアス宣言」として沿岸全域に広げることを決めている。同監理官は沿岸全域の取り組み状況も公表予定にあることに触れ、「復興のための工事はまだ続く。気仙宣言の始まりに尊い犠牲があったことを胸に刻み、必要な対策を進めていこう」と呼びかけていた。
 このほか、同日の会合では「見える化」に積極的に取り組んだ現場と、構成員の投票で好事例を選んで表彰。積極推進では門の浜漁港災害復旧関連工事災害防止協議会と野々田地区工事安全連絡会議、好事例では門の浜防止協の危険箇所周知などの取り組みをたたえ、熊谷署長が表彰状を贈った。次会会合は来年2月に予定している。