ワイン海中熟成実験開始、小石浜の漁業者ら〝農・水のコラボ〟/大船渡

▲ ホタテ耳づりの重り代わりに海中に沈められたワイン=三陸町綾里(佐藤寛志さん提供)

船上で作業を行う佐々木さん=同

 大船渡市三陸町綾里の小石浜地区で5日、県産ワインの海中熟成実験が始まった。恋し浜ホタテの養殖棚で耳づりの重り代わりにワイン計3本を取り付けるもの。養殖棚を貯蔵庫とすることで、県内の〝農・水のコラボ〟による新たな産業や観光資源を創出することを目指している。ワインは半年後に引き上げ、保存状態や味などを確認後、問題がなければ本格的に熟成を行っていく。

 

産業・観光資源創出目指し

 

 海中では、アルコールの熟成速度が地上よりも速いとされ、沈没船から引き上げられたワインなどは、高値で取引されているという。国内では、海中貯蔵酒として海底に沈めた日本酒やワインを販売しているケースもある。
 小石浜での実験は、県産ワインの製造会社と県認定の指導漁業士・佐々木淳さん(46)=同町綾里=のつながりがきっかけ。 養殖ホタテの耳づりを海中に沈める際に使う重りにワインを使うことで養殖棚を貯蔵庫にするという、県内のワイナリーと漁業者がタッグを組んだ新たな産業づくりのほか、三陸を訪れたダイバーたちが養殖棚からワインを〝収穫〟できるといったユニークな観光資源の創出を目指している。
 この日の早朝、小石浜漁港から出港した佐々木さんらは、養殖棚からホタテを引き上げたあと、重りとワインを取り換えたり、重りと一緒にワインを結びつけるなどの作業を行った。
 ワインは半年後に引き上げて保存状態や味を確認。問題がなければ本格的に海中熟成をスタートさせ、㈱地域活性化総合研究所が運営する大船渡市ふるさと交流センター・三陸SUN(東京都杉並区)で、「恋しいマーメイド」(仮称)として販売する青写真が描かれている。
 地活研の福山宏主席研究員(53)は「大船渡の特色は海産物という印象だが、そうではないワインを使いつつ、海とも関連しているというコンテンツ。うまくいけば付加価値もつくし、面白い取り組み」と期待を寄せる。
 佐々木さんは「〝農林と水産のコラボ〟による、岩手の新たな産業・観光資源にするというのがここでの目標。実験が成功したら、すぐにでも本格的に取り組みたい。流通は三陸SUNが流れをつくってくれると思う」と期待を込めている。