木工2事業体の未収金、調停申し立てで新段階へ/住田町議会12月定例会

▲ 町婦人団体連絡協議会のメンバーをはじめ、多くの住民が傍聴に訪れた=住田町議会

 住田町議会12月定例会は5日に開会し、会期を8日(金)までの4日間と決めたあと、菅野浩正、瀧本正德、佐々木信一、林﨑幸正(いずれも無所属)の4議員による一般質問が行われた。答弁で当局は、世田米で木工団地を形成する三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)に対する貸付金残金などの回収に向け、先月下旬に調停申し立てを行ったことを明らかにした。臨時会議決から4カ月。総額10億円超の債権を巡る動きは、ようやく新たな段階に入った。

 

 臨時会議決から4カ月、一般質問で当局明らかに

 

 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町へ償還する計画だった。しかし、支払期日を迎えても、定められた額の償還ができない状況が続いていた。
 調停を巡る関連議案は、神田謙一町長就任前の7月11日に開かれた臨時議会に提案され、賛成多数で可決した。
 調停とは裁判所の調停委員が間に入り、協議によって適正・妥当な解決を図る制度。法律的な制約にとらわれず、双方が自由な意見を述べ、納得がいく解決を目指す。合意すると、裁判判決と同じ効果がある。
 当局は議決時点では、早期に行う姿勢を示していたが、神田町長が就任した8月に入っても申し立てに至っていなかった。今回の一般質問では林﨑議員がこの問題を取り上げ「状況はどうなっているか」「どのように進めていく考えか」と迫った。
 答弁で神田町長は「町の顧問弁護士により、調停準備を進めた。事業体の新たな代表者登記が完了しなければ申し立てをすることができないことから、町は代表者の早期選出を促してきた。事業体では代表者の選考に難航したが、10月上旬に登記が完了した。これを受け、申し立てを行った」と説明。代表理事は現在、三木は菊池良一氏=同町、ランバーは上田昭雄氏=大槌町=がそれぞれ務めている。
 神田町長はまた、通常であれば申し立ての1カ月後に呼び出しがあるとし、早期和解に至るよう進める方向性を強調。和解前には、町民向けに説明機会を設ける考えも示した。
 さらに「木工団地は森林・林業のまちづくりを推進するうえで重要な施設。経済効果、雇用の確保、川上から川下までの林業システム循環のためには欠かせない事業体。(けせんプレカット事業協同組合を含む)3事業体が一体的な経営を行い、経済効果を生み、今後ますます発展するよう関係機関と連携・調整を図っていきたい」と述べ、理解を求めた。
 町によると、11月下旬に大船渡簡易裁判所に関係書類を郵送。申し立ての相手は両事業体と連帯保証人の25個人・団体。農林業振興基金貸付金債務や集成材加工施設の貸付料、町有立木の未払代金として総額で約10億7000万円の支払いを求める。
 再質問答弁で横澤孝副町長は、両事業体は本年度4〜9月期では純利益を計上していると説明。調停対応を巡っては、両事業体でも弁護士を選任したい意向を示していることも明らかにした。解決時期を問われると、「なるべく短いものにしたいが、住民に受け入れられる調停額なのかも見定めながら対応したい」と語った。
 トップ登壇の菅野議員は公共交通対策について質問。「高齢者の足」確保などを掲げながら、現在2路線で運行している町コミュニティバスの路線増を求めた。
 梶原ユカリ町民生活課長は、本年度実施した住民アンケートでは通学・通院・通勤は町内移動だけで完結しない住民が多いことが明らかになったとし、コミュニティバスだけでは対応が難しいとの認識を示した。そのうえで「予約制のデマンドバスも含め、新たなサービスの検討に向けて情報収集を進めている」と答弁した。
 全国的にも問題となっている空き家問題を取り上げたのは、瀧本議員。町施策の状況について答弁を求めた。
 神田町長は今年8月に全国空き家対策推進協議会が設立された動きや「空き家バンク」の稼働に言及。こうした全国規模のネットワーク登録に向けて準備を進めている現状を示したほか、「若者や子育て世代、高齢者が安心して暮らすことができる住環境整備、町営住宅管理も含めた計画策定の必要性がある。今後は住田町住生活基本計画(仮称)の策定を進める」と述べた。
 佐々木議員は観光振興について取り上げた。この中では移転新築したJAおおふなと世田米支店の営業開始にもふれ、閉鎖となった旧世田米支店と旧ふれあいセンター、有住支店の施設利活用について、当局の考えを質した。
 答弁で神田町長は、10月上旬に農協幹部が対応について説明に訪れたと報告。「世田米、有住各支店に関しては、土地と建物ともに売却方針で、旧ふれあいセンターは今後の利用方法等を検討していくとの考えだった。農協から正式な申し入れはないため、現時点では町としての利活用は考えていない」と語った。