〝木造のハーモニー〟に関心、消防住田分署が上棟段階に/役場庁舎向かいで整備

▲ 建築現場内で行われた見学会=世田米

 住田町が進める大船渡消防署住田分署新築工事は、上棟段階を迎えた。平成26年度に完成した役場庁舎向かいに位置し、庁舎同様に木造2階建てで整備。「森林・林業のまち」のシンボル的な役割や、中心市街地における「木造建築群」を生み出す期待も担う。7日に見学会が行われ、参加者は役場庁舎との〝木造のハーモニー〟に理解を深めながら、来年3月の完成に期待を膨らませた。

2階天井部分にはCLTを導入=同


 新分署は、町運動公園野球場の外野右中間側に隣接し、敷地面積は約5000平方㍍。施工は佐武建設・住田住宅産業・山崎工業特定共同企業体。設計監理者は、SALHAUS一級建築事務所=東京都=が担っている。今年5月から工期に入った。
 新分署整備における特徴の一つは、防災機能を担うだけでなく、町が中心市街地における中核施設の一翼とも位置付けている点。施設そのものの機能だけでなく、周辺の景観やまちづくりへの波及効果を見据えている。
 公募型プロポーザル方式で40業者からの提案から選ばれたSALHAUS社は、「まちを見守る木の大庇(おおひさし)」として提案。分署棟は野球場右翼側に構える2階建てのコンパクトな建築とし、気仙川側に操法大会などに対応できる訓練スペースを確保した。
 町役場と同様に大庇を設けることで、今後控える公共建築整備などの「共通言語」になり得るとしている。
 工法には「貫式ラーメン構造」を採用。柱に梁を貫通させて交差させ、接続部には金物をほとんど使わず、木製の「込み栓」「楔(くさび)」を使用。伝統的な気仙大工の技術を活用・継承するほか、将来的な部材交換や接続部の締め直しも容易にできるという。
 柱や梁は、町産のスギ、カラマツの集成材を中心に調達。林業資源を生かす新たな産業化の観点から注目を集める木材パネル・CLT(直交集成材)も2階天井や階段部分などに活用される。
 1階は出動準備室、仮眠室といった救急出動に備える業務スペースに加え、展示ギャラリーを配置。消防ポンプ車や救急車両などが並ぶ車庫は2階への吹き抜け構造となっている。2階には、事務室や会議室、団本部室などが入る。
 見学会には建築、設計関係者や住民ら約20人が参加。貫構造の柱部分などを間近で見学したほか、2階上部の展望スペースから周囲を見渡し「向かいに立つ役場と、木造のハーモニーが奏でられている」といった声が聞かれた。
 SALHAUS社の安原幹共同代表(47)は「施設前の道路は通学路でもあり、幅広い世代が気軽に立ち寄りやすい場となることで地域防災力の向上や木の建物を身近に感じてもらうことにつながるのでは。木造の建築群として今後形成されていくためにも〝二つ目〟の施設は重要なだけに、しっかり完成させたい」と話していた。