「平成」31年4月30日で幕、天皇陛下の退位日決まる/政府が閣議決定

▲ 平成25年7月、東日本大震災のお見舞いに足を運ばれた天皇、皇后両陛下=大船渡市で

 政府は8日の閣議で、天皇陛下の退位日を平成31年4月30日とする政令を決定した。陛下は同日退位され、「平成」が幕を下ろす。これに伴い、翌5月1日に皇太子さまが即位され、新たな元号となる。東日本大震災後、気仙にも足を運ばれ、被災した人々を励まされるなど、お気持ちを寄せてくださった陛下の退位日決定を受け、住民からは感謝を表す声が上がっている。

 

5月1日、皇太子さま即位/気仙住民からは感謝の声

 

 天皇陛下は昭和8年にお生まれになられ、昭和天皇の崩御に伴い55歳で即位された。83歳とご高齢になられたいまも、多くの公務に臨まれているが、昨年8月には「生前退位」のお気持ちがにじむ国民へのメッセージも表明。「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」などと語られていた。
 この後に政府などでの検討が本格化し、今年6月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立。今月1日には安倍晋三首相を議長として衆参両院正副議長、最高裁長官、皇族などで構成する「皇室会議」が同法施行日を話し合い、会議の意見として再来年4月30日退位を決めていた。
 この閣議決定があった8日に公表が始まった同会議の議事概要によると、▽陛下に御在位満30年の節目をお迎えいただきたいこと▽国民生活への影響等を考慮すること▽静かな環境の中で国民が陛下の退位と皇太子さまの即位をことほぐにふさわしい日とすること――などの意見の表明があったという。
 東日本大震災など大規模災害の被災地にも足を運ばれ、住民を励まされてきた陛下。気仙にも25年7月に皇后さまとともに訪問され、仮設住宅入居者らと直接触れ合われるなどした。
 この際、大船渡市では、がれき処理に力を尽くした太平洋セメント㈱大船渡工場をご視察。
 同市末崎町の会社員・近藤善典さん(34)は、「工場へ向かわれる車中の陛下を旗を振ってお迎えした。とても勇気をいただいた。大きな災害が全国で発生している。皇太子さまが即位された際にも、同様に各地へ足を運んでいただけるとうれしい」と語る。
 当時、陸前高田市の第一中仮設住宅で自治会役員を務めていた佐々木栄さん(86)は=気仙町=は、「温かいお言葉をいただき、言葉にならないほどうれしさがこみ上げた。平成という一つの時代が終わることに寂しさはあるが、陛下との思い出を胸に、住宅再建を目指して頑張りたい」と前を見る。
 初めに立ち寄られた住田町世田米の町保健福祉センターには、翌年3月、初の住田ご訪問を後世にも伝えていこうと、町が「御来町記念碑」を建立。同センター内に事務機能を置く町社会福祉協議会の佐々木松久会長(78)=世田米=は「厳重な警備の中で、ごく自然に立ち寄られたというような雰囲気があり、終始にこやかな表情をされていたのが印象的だった」と振り返る。
 退位については「災害発生時だけでなく、毎日のご公務を考えれば、自然な流れであると受け止めている。譲位後は、安らかに過ごしていただきたい」と思いを寄せる。
 新元号などの本格検討は年明けからになるものとみられる。大船渡市末崎町の無職・平野ツルヨさん(84)は、「平成が幕を閉じるという話を聞き、時の流れの速さを感じる。天皇陛下には、長い間お疲れさまでしたという思いです」としみじみ語る。
 平成生まれで陸前高田市立博物館で学芸員を務める荒木優さん(26)は、「元号が変わるのは初めての体験なので、先輩たちが感じた気持ちが分かるのではないかと思う。個人的には、周辺の調和を図りたいという意味を込めて『友』という漢字が使われたらうれしいです」と話していた。