防災意識忘れないで、「さいがいFM」が6周年/陸前高田

▲ 6周年記念番組の収録を行うパーソナリティーら=高田町

 陸前高田市の「陸前高田さいがいFM」(80・5メガヘルツ)は10日、開局から満6周年を迎える。東日本大震災後、陸前高田市の独自情報を細やかに発信するとともに、平時にも親しまれる放送内容構築に取り組んできた。大震災発生からあす11日で6年9カ月と時間が経過したこともあり、「災害FM」としての存在意義や今後のあり方も模索されるが、スタッフは「あくまで市民に防災・減災の大切さを呼びかけていくことを基本としながら、聞く人が前向きになれる番組を届けていきたい」という方針を堅持して運営にあたる。

 

震災発生からあすで6年9カ月 きょう、特別プログラムを放送

 

 大震災発生を受け、大船渡市では平成23年3月に臨時災害放送局「おおふなとさいがいFM」が立ち上がったが、陸前高田市では当時「市独自運営による放送は困難」とし、同FMを通じて行政情報を発信するにとどまっていた。
 こうした中、津波で甚大な被害を受けた同市において、生活再建のために必要な情報を丁寧に発信することが急務として、NPO法人陸前高田市支援連絡協議会AidTAKATAが市に代わり開局を準備。発災9カ月を迎える直前の12月10日午後1時、待望の〝第一声〟が市民に届けられた。
 その後は現在に至るまで、臨時災害放送局の免許は市が持ち、同法人が番組を運営。現在は5人の市民がパーソナリティーを務め、行政広報をはじめ、生活情報を届ける。普段は音楽番組や市議会中継などを放送し、津波注意報・警報の発表時、Jアラート発令などの際にはスタッフが局内に詰め、防災情報を繰り返し伝える。
 東北の被災3県では大震災後、24の自治体で延べ29の臨時災害放送局が開局。現在その多くは廃止されたか、コミュニティーFM局をベースとした運営方式に戻る、または移行している。「災害FM」の名がつく局は現在、同市と福島県南相馬市、同県富岡町の三つにまで減った。
 総務省のガイドラインによると、臨時放送局の開設は「災害が発生した場合に、その被害軽減に役立つよう開設する〝臨時かつ一時の目的のための〟FM放送局」とされている。一方で、免許期間は「被災者の日常生活が安定するまでの間」とあり、明確な制限はない。
 陸前高田市の戸羽太市長は「さいがいFM」の継続について、「被災したすべての方が仮設住宅を出られる日までは続けたい」と述べている。市内災害公営住宅の全戸整備が完了し、新しい中心市街地の形も見えてきた同市だが、今も被災者の「生活が安定」したとはいいがたい。次の住まいに移ってからも、経済面やコミュニティー形成面で新たな問題が持ち上がり、仮設住宅に取り残された人たちの孤独や先行きへの不安解消は大きな課題だ。
 給水や炊き出しなどの「救援情報」を放送する必要性がない〝常時〟にあって、同局の責任者も務めるパーソナリティー・金野由美子さん(53)=高田町=は、「聞く人の気持ちが落ち込まないような、前向きな番組づくりを心がけている」という。
 同時に、市防災局防災課の中村吉雄課長が『中村君の防災教室』として番組を持つなど、薄れゆく防災意識を啓発し続けることも同局の重要な役割。防災行政無線が聞こえにくい地区や場所においては、「ラジオで同一内容が聞けて助かっている」と話す市民もいる。
 金野さんは、「私も含めスタッフはみんな素人だが、それぞれ『こんな番組があったらいいな』という思いはある。既存の番組もマイナーチェンジしながら、市民やここを訪れてくれる人たちも巻き込み番組をつくっていきたい」と、意気込みを新たにしている。
 10日は午前9時~午後7時まで、6周年記念番組『なぞったべ陸前高田』をほぼ生放送で届ける。同10時ごろ始まる「6周年だよ全員集合」には、金野さん、長野妙子さん、平田宣恵さん、菅野陽子さん、井筒雄一朗さんのパーソナリティー全員と、同法人前代表の村上清さんが出演する。
 午前11時からと午後2時30分からの『ヨーコのミュージックボックス』にはそれぞれ、同市在住の演歌歌手・菊池秀樹さんとミュージシャンの雪音さんをゲストに招く。
 午後1時からの『What's up陸前高田』では戸羽市長、立教大学元副総長の西田邦昭さんを交えて放送。2時からは『ゆめちゃん情報局特別編』として、市内の新しい施設や行事について紹介する。
 5時からは新番組『まっとと雪音のラジ音タイム』がスタート。6時ごろから『まとめ編』の放送となる(放送時間はいずれもおおよそ)。市外の人は「サイマルラジオ」などネット放送でも聞くことができる。