永浜・山口地区工業用地での発電事業の実施「困難」、ILC推進の立場明確にしたと一般質問で当局説明/大船渡市議会
平成29年12月14日付 1面

大船渡市議会12月定例会は休会明けの13日、通告に基づく一般質問が行われた。初日は奥山行正、小松龍一、千葉盛、渕上清、伊藤力也(いずれも光政会)の5議員が登壇し、市当局と論戦を展開。県が北上山地への国際リニアコライダー(ILC)誘致を見据え、公募を中断した大船渡港永浜・山口地区工業用地に民間事業所が木質バイオマス火力発電事業を検討している件について、市は事業所側からの問い合わせに「事業の実施自体は、非常に困難な状況」との見解を示し、ILC推進の立場を明確にしたことを明らかにした。
事業所側に市の見解示す
ILC誘致推進による港湾の活用をはじめ、交流人口の拡大、JR東日本との連携、幼児教育・保育の無償化を取り上げたのは、千葉議員。このうち、ILCの誘致促進では、県が6月12日から公募を中断している永浜・山口地区工業用地に関し、同用地で木質バイオマス火力発電事業を検討する民間事業者への対応をただした。
髙泰久副市長は、県がILCによる港湾活用を検討するために公募を中断したことや、先月10日に国際将来加速器委員会がILCの整備延長を当初計画の31㌔から20㌔に短縮し、段階的に延長するステージング方式を承認した件などを挙げ、「当該事業者からの問い合わせに応じる形で、公募の再開自体が不透明であることや、発電事業に対する市民の深い懸念等を伝えた」と答えた。
そのうえで、「事業者においては発電所と送電線との接続という電力系統連携の手続きに着手するため、さらには国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の適用を受けるために事業用地の早期確保が必須となる。そうしたことへの対応が時期的に極めて困難な現状と踏まえたうえで、事業化の是非を判断するものと推察する」と述べた。
再質問で同議員は「市として誘致できないことを伝えたとしていいのか」と確認。新沼徹企画調整課長は「公募の再開が近々にはないことは、ILCを取り巻く情勢からみても明らか。そういったことを明確にし、市民からの反対論が非常に多いことを深い懸念として伝えた。市としてはそういった事情のうえで、事業の実施自体は非常に困難な状況と強く伝えたところ」と説明した。
伊藤議員は、災害公営住宅の入居料と子育て支援で質問。災害公営住宅の入居料では、入居から4年目に入居基準所得の15万8000円を超える収入超過者などへの対応を尋ねた。
戸田公明市長は「災害公営住宅は特例として収入超過者の入居を認めているが、家賃等は一般の市営住宅と同様、入居後4年目以降は割り増し家賃が加算される」と述べ、割り増し家賃の上限となる近傍同種家賃の算定において、基礎数値として用いる災害公営住宅の建築費が震災のために急激に上昇し、平時と比べて高くなっていると説明。
今後の対応については「建設時期や規模等で大きな差異が生じず、入居者間の公平性が確保できるよう、近傍同種家賃の設定などについては県、関係市町村と連携して進めていきたい」と回答した。
奥山議員は農業振興と鳥獣被害、義務教育の充実の2点を質問。このうち、農業振興では、第6次農業振興基本計画で特産品の振興として掲げる「小枝柿」「つばき油」の生産量拡大に向けた方策などを質問した。
小枝柿に関して市長は「高樹化し、収穫されないまま放置されている木も多いことから、収穫期を迎えた果実の集荷方法について検討していく。また、市農協が来年度以降に休耕地への苗木植栽を計画していることから、関係機関と連携し、生産量の拡大に努めていきたい」と答え、市内事業所と連携した商品開発、規格外果実の活用といった具体的な取り組みにも触れた。
メディアユニバーサルデザインの取り組みや命名権の導入などを取り上げたのは、小松議員。このうち、大船渡町の土地区画整理事業区域内で8月に完成した旧台町踏切の歩行者用横断通路について、「県道丸森権現堂線からJR大船渡線BRTまでの約37㍍に、海側からの一方通行で1車線を確保すべき」と当局の考えをただした。
市長は「車両の通行は旧台町踏切の閉鎖で利便性の低下を招かないよう、茶屋前線の旧大船渡駅付近に横断箇所を設け、BRT上を東西に通行できるよう整備している。仮に旧台町踏切付近の横断箇所を車両が通過できるようにする場合、道路設計上、交差点の形状を整え直さなければならないが、街区の形状や関係地権者の仮換地にも影響を与え、事業の全体計画にも変更を及ぼすことになる。現状での車両の通行は極めて困難と考えている」と理解を求めた。
渕上議員は、ポリエステル製品などに含まれるマイクロプラスチックから大船渡湾内の環境を守る重要性と、市民文化会館の利活用をめぐって論戦。マイクロプラスチックの問題では、カキやホタテなど大船渡産ブランドの強化に向け、環境保全に対する市民意識高揚の必要性を訴えた。
後藤俊一生活福祉部長は、清掃船さんご丸による湾内清掃などの各種取り組みを踏まえ、「さらなる環境保全を図るためには行政のみならず、漁業関係者、地域住民の協力が不可欠。清掃活動等の実施はもちろん、一人一人が日常においてごみや生活排水等を抑制していくことが重要。今後も環境に関する学習会の開催、広報等への記事掲載を通じ、地域住民に海を守るためには陸から防止する必要性を、より一層認識してもらえるよう取り組みたい」と答えた。
2日目以降の通告内容は次の通り。
【14日】
▽東堅市議員(新政同友会)=①震災復興後の重点的な施策②小・中学校適正配置計画③福祉政策
▽今野善信議員(同)=①スポーツを活用したまちの活性化②母子保健事業への取り組み
▽三浦隆議員(同)=①被災跡地の利活用と復興後のまちづくり②復興ホストタウンへの登録と今後の取り組み
▽船砥英久議員(改革大船渡)=①大船渡市の防災②鳥獣対策③水産資源対策④難病の医療⑤スポーツイベント
▽船野章議員(同)①ILC対策に取り組む市長の政治姿勢②学校における教諭等の対応と教育委員会の危機管理対策③市長直轄の危機管理部署と専門対策監設置の必要性
【15日】
▽田中英二議員(日本共産党大船渡市議団)=①住宅などのリフォーム助成制度の創設②災害公営住宅の家賃制度③地域公民館の補修費助成④介護施設の整備
▽滝田松男議員(同)=①国民健康保険の広域化と小学生までの医療費現物給付②本市の復興とILC誘致にかかわる国道343号整備③学校統廃合に伴う課題④末崎町小田地区の道路改良と碁石漁港
▽森操議員(無会派、公明党)=①アワビの磯根資源の管理②地域包括ケアの当市の進ちょく状況③未来かなえネットを活用した行政サービスの拡充