今月中に2車線供用へ、国道397号高屋敷工区/住田

▲ 整備が終盤を迎え、現在は片側交互通行となっている高屋敷工区=住田町

 住田町を通る一般国道397号のうち、大船渡市側から津付道路につながる全長約1・5㌔の高屋敷工区区間で、今月中に2車線供用が始まる見通しとなった。現道に沿って道路を新設し、より広い道路幅で勾配が安定するなど利便性が向上。国道107号との分岐点から種山につながる397号は、長らく交通の難所とされてきた。未改良区間が唯一残っていた高屋敷工区の完全供用で、当初計画された約10㌔に及ぶ内陸アクセス改良は大きな節目を迎えた。

 

〝難所解消〟大きな節目に

 

 全長3㌔の高屋敷工区は、県が平成10年度に着手した。総事業費は43億800万円で、大船渡側の1・5㌔は19年度に供用済みとなっている。
 津付道路に接続する約1・5㌔の区間の整備も終盤を迎えた。現道より高い位置で道路を新設し、現道沿いには壁となるコンクリート施工を行うなど、道路改良や舗装工事を展開してきた。
 今月に入り、新設道路を走行できるようになったが、片側交互通行。月内には現道との切り替えが終わり、2車線供用が始まる。県は当初、30年3月までの完了を掲げてきたが、積雪や凍結による危険性が増す時期までに間に合わせようと、整備を急いできた。
 新たな道路は、大型車のすれ違いに支障がないよう幅員9・5㍍を確保。現道は部分的に急勾配がある形状だったが、一定の勾配とすることで走行時の安全性を高めた。2車線供用後も、区間内で現道から乗り入れる部分の道路整備などは続く。
 県大船渡土木センターの藤島謙道路整備課長(49)は「皆さんのご協力により、安全で円滑な交通網を整えることができた。幹線道路としての機能向上や、沿岸地域の復興に資するものととらえている」と語る。
 県管理の国道397号は、大船渡市を起点とし、住田町や奥州市などを経由して秋田県横手市に至る全長約140㌔の路線。気仙住民にとっては東北新幹線の〝最寄り駅〟である水沢江刺駅をはじめ奥州市への移動に欠かせない路線となっている。
 災害発生時には、優先的に交通確保を図る緊急輸送道路にも指定。その一方で、とくに住田町世田米小股に位置する国道107号との交差点から種山に近い栗木トンネルまでの区間は急カーブ、急勾配が多く、冬期間に入ると積雪や凍結で交通の難所と化す。長年の地域課題であり、対策が急がれていた。
 また、大船渡港を利用した物流でも重要な役割を担う。県は11年度に、大船渡市~住田町~奥州市のルートを「大船渡港湾関連道路」と位置づけた。
 これまで、住田町における区間事業延長9・9㌔のうち、107号との交差点に近い小股地区でトンネルや橋梁を整備。種山に近い栗木トンネル側の子飼沢工区も改良工事が行われた。
 同工区と大船渡側で接続する津付道路は、当初は津付ダム整備によって水没する計画であることから、17年度に付け替え国道として事業着手。東日本大震災後、ダム建設は中止となったが、道路整備は三陸沿岸道路(復興道路)を補完する復興支援道路として整備が続き、26年10月に供用開始を迎えた。
 高屋敷工区の整備完了で、事業区間内すべてで道路改良工事が行われたことになる。大きな節目を迎えた一方、子飼沢工区に関しては、さらなる改良を求める声も根強い。
 事業区間をまとめた図は別掲。