「いわて南自治体クラウド」運用へ、陸前高田市・住田町・一関市・平泉町・一関行政組合

▲ 情報システムのコスト低減、システムを見据え、新たな自治体クラウドを構築する=住田町役場

 陸前高田市と住田町、一関市、平泉町、一関地区広域行政組合は18日までに、情報システム管理の充実を見据え「いわて南自治体クラウド協定」を締結した。住民情報や税務、福祉など各自治体が持つ情報システムやデータを外部のデータセンターで管理・運用し、共同利用する取り組み。情報管理業務が複雑化、高度化する中、システム維持経費の節減や効率性向上のほか、災害時リスク低減も見据える。クラウドの運用開始は来年8月を目指している。

 

情報管理 共同で充実を、災害時リスクの低減も

 

 自治体クラウドは、各自治体ごとに情報システムを自庁舎などで管理、運用するシステムから、独自ネットワークをつないだ外部のデータセンターで管理・運用するもの。全国的には、10年ほど前から取り組む自治体が出始め、総務省も導入を後押ししている。
 マイナンバー利用を伴う住民サービス提供や情報管理の増大に加え、来年度からはこれまで市町村が担ってきた国民健康保険(国保)運営が県に移管される。クラウド化により、情報システムのコスト削減や業務負担の軽減、業務の共通化・標準化、セキュリティー水準向上などが期待される。
 6年9カ月前の東日本大震災では、陸前高田市庁舎が全壊し、住民情報にも被害が及んだ。地震や津波だけでなく、近年は大雨など庁舎機能をストップさせるほどの災害も頻発する中、バックアップ確保や業務の継続性保持など災害に強い基盤構築も期待される。
 陸前高田市や住田町を含む4自治体1組合は、今月7日に協定を締結。これまで、同じ業者がシステム管理などの委託を受けていたという。地理的にも隣接していることから、自治体クラウドの構築に共同で取り組むことになった。
 締結により、いわて南自治体クラウド共同利用推進協議会が発足。今後は▽住民情報・税務・国民健康保険・国民年金・福祉等情報システムサーバーの共同利用▽情報システム仕様の標準化、共通化への取り組み──を進める。
 データセンターと各自治体は、専用回線で結ぶ計画。インターネット回線とは異なるネットワークにより、外部からのハッキングやデータ流出を抑える。
 住民情報には印鑑登録や給食費・奨学金管理のほか、選挙関係も含まれる。税務では各種税の管理や納税者の宛名、口座、コンビニ収納などが対象。福祉分野も児童手当や医療費給付をはじめ、住民に身近なサービスに関する情報が今後共同管理となる。
 クラウドの開始予定時期は来年8月。震災復興計画事業に登載されていない形での事業化・協定締結は、県内初という。
 クラウド業務を担当する陸前高田市企画部まちづくり戦略室では「災害発生時などにおけるBCP(業務継続計画)の充実を視野に入れているほか、システム導入や経費削減にもつながる」と期待。今後再建する市役所庁舎のスリム化にもつながるとしている。
 システム管理には担当職員が専門的な知識が求められる。職員規模が小さい住田町でも、業務効率化に期待を寄せており、企画財政課では「既存システムや、職員が利用するパソコン環境をあまり変えない形で、停電など有事発生時にデータが危険にさらされる事態を回避することができる」と話している。