2017気仙この1年/記者の取材ノートより①【選挙】
平成29年12月20日付 1面
住田町長選は神田氏制す
新区割りの衆院選は鈴木氏当選
平成29年(2017)も残りわずか。東日本大震災からの復興へ歩みを進める気仙では、住まいの再建をはじめとする各種関連事業が進展を見せ、かさ上げ地での商いもスタートした。一方で、サンマやサケの不漁、夏の日照不足など、基幹産業に影響を及ぼす出来事も。さらに、住田町では新町長が誕生するなど、さまざまな出来事があった。この一年を記者の取材ノートから振り返る。
16年ぶりに新リーダー誕生/住田町
任期満了に伴う住田町長選は、7月23日に投票が行われた。4期務めた多田欣一氏は昨年12月に勇退表明し、16年ぶりに新リーダーを出す選挙となり、獣医師の神田謙一氏(58)=無所属、下有住=と、農業・水野英哉氏(61)=同、上有住=が立候補した。
昭和30年の町政施行以来通算17回目で、競争選は8年ぶり。新人同士の一騎打ちは町政史上初めてで、激戦の結果、神田新町長が誕生した。
㈱住田フーズ常務取締役だった神田氏は、昨年12月に出馬表明。後援会には、親族や地元住民にとどまらず、多田氏後援会幹部役員や事業所代表者、元町議も加わった。
早期に組織を固めて着実に支持を拡大。表明以降「医・食・住」の充実を訴えてきた。企業経営で培った人脈や経験でも信頼を集め、知名度不足の逆境を跳ね返し2103票を獲得して初当選した。
一方、町議会議長などを歴任した水野氏は4月に起意を固め、町議を辞職。20代からの多彩な青年団活動や上有住地区住民とのつながりから、前哨戦では知名度を生かした地域回りを重視。激戦に持ち込んだが、1959票で144票届かなかった。
人口減少下での行政運営、農林業をはじめ産業振興の展望、木工団地の早期経営再建策──。今選挙戦では、改めて町政課題が浮き彫りとなった。
投票率は81・60%で、現・新の一騎打ちとなった8年前の前々回選比を0・54ポイント下回った。上有住は84・85%、下有住は84・06%と前々回選を上回ったが、候補者が出なかった世田米は79・45%と3・48ポイント低下した。
水野氏の町議辞職に伴う町議補選も同時実施。告示20日前の立候補予定者説明会、2週間前の事前審査とも出席者はなく「候補者ゼロ」の危機に。告示1週間前、無職・荻原勝氏(57)=同、世田米=が手を上げ、無投票当選した。
黄川田氏勇退、橋本氏は落選/衆院選
「1票の格差」是正を図る小選挙区区割り改定後初の国政選挙となった第48回衆議院議員選挙は、10月22日に投開票が行われた。気仙を含む新2区は自民党の鈴木俊一氏(64)と希望の党元職の畑浩治氏(54)の一騎打ちに。復興とその先の地域振興、課題解決へ与党としての強みを訴えた鈴木氏が、通算9選を果たした。
2区全体で鈴木氏は12万9884票を獲得。畑氏を3万票余り引き離した。気仙3市町では計1万8146票で、畑氏に2953票差をつけた。
抱負な経験を持ち、さらには現職の五輪担当大臣という鈴木氏。被災地の実情に合った施策を進めてほしいという願い、「復興の先」を見据えたILC(国際リニアコライダー)や五輪関連の産業振興策への期待などが表れた結果と言える。
今回の公示直前、旧3区で連続6選の圧倒的な強さを誇ってきた黄川田徹氏(64)=民進党、陸前高田市=が勇退。同氏を支持してきた層には、実質的な後継の畑氏ではなく鈴木氏を推す動きがあり、国政をめぐっては長く「非自民」が上回ってきた気仙の勢力図に変化の兆しが見えた。
また、大船渡市出身で比例代表東北ブロック2期の橋本英教氏(50)=自民党=は、比例単独での立候補となったが、議席を得られなかった。(年齢は当時)