公共交通の課題浮き彫り、日常的な移動手段調査 「将来利用したい」は半数超/住田町

▲ 町が運行しているコミュニティバス=上有住

 住田町は本年度、交通対策アンケートを行い、住民の日常的な移動手段について調べた。結果をみると、回答した8割超が自家用車を主に利用し、通院や買い物では町外に出向く割合が多いことが明らかになった。一方で、高齢化が進行している中、今後公共交通を利用したいと考える回答者は半数を超えた。公共交通のあり方として、広域的な視点での充実策や、運転に不安を抱える住民増加に対応する重要性が浮き彫りとなっている。

 

広域化、高齢者対策重要に

 

 町は、住民が普段どのような移動手段を使っているかを調べ、今後の交通対策や町営バス(コミュニティバス)のダイヤ改正検討などに生かそうとアンケートを実施。昨年7~8月に、18~72歳の町民から無作為に抽出した1300人を対象に行い、632人(48・5%)から回答を得た。
 「通学・通院・買い物など日常生活の移動手段は」の問いには、84%が自家用車と回答。自家用車以外の中にも「家族の車を利用している」の回答が目立った。
 通院・買い物の行き先=別表参照=を尋ねたところ、通院で最も多かったのは県立大船渡病院がある大船渡市で295人(47・4%)。買い物は遠野市が327人(32・5%)と最多で、大船渡市が291人(29・0%)で続いた。
 通院、買い物とも町内と答えた割合は、遠野市や大船渡市を下回った。隣接市を行き来できる公共交通の重要性が浮かび上がる。
 将来の公共交通利用に関しては、「主な移動手段が公共交通になる」と回答した割合が54%に達した。同町の高齢化率が40%を超えている中、多くの住民が加齢による運転への不安を抱える現状がうかがえる。
 現在、町内では鉄道はJR釜石線、路線バスは岩手県交通の陸前高田住田線、中井線、急行大船渡盛岡線が運行されている。さらに気仙タクシーがあるほか、町は平成22年度からコミュニティバスを運営。川口上有住駅線と、八日町遠野駅線がある。
 町内では一昨年から今年にかけ、民間医科診療所が相次いで閉院。世田米にある県立大船渡病院附属住田地域診療センターや、町外医療機関へのアクセス充実を望む声が高まっている。
 その一方で、今回の調査では改めて、自家用車利用が多く、公共交通利用者が少ない実態が浮き彫りに。全国的にみても、とくに地方圏で路線バス利用者の減少が著しい。バスやタクシーの運転手不足も深刻化しており、新規路線整備や便数拡充に対応できない状況も見受けられる。
 また、将来的には公共交通を利用したいと考えている層も一定数いることが明らかになり、中長期的な視点での施策をどう進めるかにも一石を投じる形となった。
 町は「各種研修会などで公共交通を考える機会を設け、町民の皆さんとともに公共交通を守り、育てていきたい」としている。
 今後は既存のバス路線充実にとどまらず、利用者の自宅や近隣停留所で乗車でき、目的地の停留所まで利用できる事前予約型の乗り合いタクシー導入も検討課題として予想される。
 また、本年度から本格的に動き出した町内5地区での「小さな拠点づくり」の取り組みでも、移動手段に不安を抱える住民支援に活路を見いだせるかが注目される。