復興と未来築く力に/気仙両市で成人式(動画、別写真あり)
平成30年1月9日付 1面

大船渡市と陸前高田市の「成人式」は7日、それぞれ行われた。今回は、平成9年4月2日から同10年4月1日までに生まれた大船渡市の393人、陸前高田市の231人、計624人が対象。新成人らは晴れ着やスーツ姿で式に臨み、家族や人生の先輩たちから激励を受けながら、東日本大震災からの早期復興と未来のまちを築く力になるべく、大人としての誓いを新たにした。
活気に満ちたふるさとを、感謝の気持ちと強い心を/大船渡
開催時期を冬に移して7回目となった大船渡市の成人式。会場のリアスホールには、振り袖や羽織はかま、スーツに身を包んだ新成人309人が会し、旧友らとの再会を喜び合った。
震災発生時は、中学1年生だった新成人たち。津波による犠牲者はなかったものの、多くの悲しみに胸を痛め、被災による生活環境の大きな変化も味わった。これらを周囲の支援や協力、自らの創意工夫で一つ一つ乗り越えながら、10代としてできることから地域の復旧、復興にも携わってきた。
式典では、盛小学校児童とともに市民歌を斉唱。病や事故などで命を落とし、出席がかなわなかった同級生、震災の犠牲者らに対して黙とうをささげた。
戸田公明市長は「本日の良き日を迎えることができたのは、家族や多くの人の支え、国内外からの支援のたまものであると胸に刻み、これからを一歩一歩歩んでほしい」と式辞。熊谷昭浩市議会議長は祝辞を通じ、新成人らを激励した。
新成人代表の抱負発表では、実行委員長で同市職員の川畑大(おおき)さん(19)=第一中出身=と、さいとう製菓㈱勤務の船砥沙樹さん(19)=越喜来中同=が登壇。
川畑さんは「私たちは、大船渡市が震災から立ち上がり、よみがえっていく姿を間近で見てきた。学業に励んでいる者、職業に従事している者と立場は違うが、今後は新成人それぞれが各分野で活躍していくことで、この大船渡市をより活気に満ちたまちにしていきたい」と力強く誓った。
船砥さんは「周囲の方々への感謝の気持ちを忘れることなく、大人としての自覚と、社会の一員としてどんな困難にも屈しない強い心を持ち、常識と責任感のある人間になれるよう日々精進していく」と気持ちを新たにした。
式典前の記念行事では、みんなのしるし代表で三陸国際芸術祭プログラムディレクターなども務める前川十之朗(じゅうじろう)氏が講演。歌やダンスも織り交ぜながら、チームワークの必要性などを語った。
多くの祝福を受け、大人としての第一歩を踏み出した新成人たち。陸上自衛隊員として福島県内に勤務する野々村力さん(20)=赤崎中同=は、「責任ある行動を取り、仕事を頑張っていきたい」と決意。
山梨県にある都留文科大学2年の加藤桃子さん(20)=吉浜中同=は「大学で英語や韓国語などを学んでいる。将来は観光の仕事に就き、大船渡の力にもなれれば」と話していた。

震災で亡くなった同級生の遺影を抱いて出席する新成人も=高田町
亡き仲間もともに出席、今を大切に生きると誓う/陸前高田
陸前高田市の成人式は、高田町の市コミュニティホールで挙行された。東日本大震災発生当時、中学2年になる直前だった231人が新成人として晴れの日を迎え、式典では「しっかりと自分の人生をまっとうしていこう」と力強い決意をのぞかせた(7面に関連記事)。
式では戸羽太市長が式辞。「同級生の遺影を掲げて出席される方を見て分かるように、成人になることがかなわなかった仲間もいる。皆さんは〝当たり前の幸せ〟を忘れず、多くの人のお世話になってある〝いま〟を大切にしてほしい」と述べた。
成人の誓いでは、高田町の会社員・新沼広和さん(20)=第一中出身=と、神奈川県の文教大学に通う鵜浦史帆さん(20)=同=が登壇。新沼さんは働き始めてからお金を稼ぐ大変さを実感しているといい、その分、自分を育ててくれた家族らに対する感謝の思いを深めたという。また、震災で亡くなった同級生がいることに触れ、「この日を迎えられなかった仲間の分も精いっぱい生きたい」と頼もしい姿を見せた。
鵜浦さんは津波で自宅が被災し、避難所生活を送る中で「栄養が偏り体調管理が難しかった」と述懐。食事の大切さを痛感したことをきっかけに管理栄養士を目指すようになったと述べ、「いずれは、古里で暮らす方々の健康寿命が延びるよう守っていきたい。復興に役立てる人材となるべく歩みを進めていく」と堂々と語った。
式典に続き、成人式実行委員会(菅野太朗委員長)が中心となって記念行事を実施。まず、各中学校の恩師らが寄せてくれたビデオメッセージを上映した。出席者は先生たちの「成人おめでとう」「みんなは私たちの誇り」という言葉に対し、15歳の子どもに戻ったような笑顔をみせ、涙ぐんだ。
このあと、委員らは今後の意気込みや大人の仲間入りを果たした感想などを会場にインタビュー。「大学生活を頑張り、必ず陸前高田へ戻ってきたい」「先生方のメッセージを聞き、感謝の気持ちしかない」「きょうぐらいは親に『ありがとう』と伝えたいと思う」などと、まっすぐで温かい発言が聞かれた。
第一中出身で現在は陸上自衛隊員として活躍する佐藤祐貴さん(20)は、東日本大震災で亡くなった母に「この姿を見せたかった」と語る一方、「責任ある立場という自覚を持ち、自分で考えて行動できる大人にならなければと思っている」と力強く誓っていた。