「まちライブラリー」誕生、本きっかけにつながりを/陸前高田(別写真あり)
平成30年1月27日付 7面

陸前高田市高田町に、私設図書館「ペチカ カフェ&ライブラリー」が誕生した。人々が思い入れのある本を持ち寄ることで成長していく「まちライブラリー」として、気仙では初めての開設。オーナーの長谷川順一さん(37)=横田町=は、人が集まる居場所、本を通じた出会いと可能性がはぐくまれる場所となることを願い、「同様の取り組みを気仙に広げていってほしい」としている。
〝居場所〟としても機能、長谷川順一さんが高田町に開設
「まちライブラリー」は、大阪府にあるオフィスビルの一室から始まった活動。商店の中や学校・大学、病院、寺社仏閣、カフェ内など好きな場所に〝本棚〟を置き、一人一人が本を提供することで〝育てていく〟私設図書館で、本をきっかけとしたつながりが生まれる場所になっている。
現在、全国に540を超えるまちライブラリーがある中、建設会社社長である長谷川さんがこの取り組みを知り、陸前高田での開設を計画。高田町鳴石に木造一軒家を建設し、今月から市民らへの開放を始めた。
現在はまだ図書数も少ないが、一冊一冊には貸出カードとともに「みんなの感想カード」がはさまれている。感想カードは、本の寄贈者がその本に対する思い入れや紹介文を書き、借りた人がそこに読んだ感想を加えていくというもの。「いらない本」ではなく「大切な本」を提供してもらい、図書施設としての魅力をつくろうというまちライブラリーにおける特徴的な取り組みとなっている。
「本を読むということは〝会話〟の一種でもあると思う。同じ本を読んだ人同士の出会いは、ふつうに会うのとはまた違うつながりになる。そこから新たな結びつきが生まれたりしていけば」と長谷川さん。「こうした場所は、さまざまな要素や人の〝ハブ(複数のネットワークを接続する装置)〟になるはず」と開設への思いを語る。
施設内には店名でもある「ペチカ」というレンガ製暖房設備を設置。ロシアなど厳寒地で使われる蓄熱式のまきストーブで、その柔らかい温かさは体にも目にも優しく、長時間のんびり過ごすのに適する。店内にはさまざまな形状・大きさの椅子やソファが置かれ、地場産材がふんだんに使われた内装も、唱歌『ペチカ』に歌われる世界観のようにぬくもりがある。
カフェを併設したのは、ペチカの温かさを感じながら、長い時間を過ごしてもらいたいから。今月いっぱいは利用者に対しコーヒー1杯を無料で提供し、「気軽に訪ねてほしい」とする。
同様のライブラリーは小友町の箱根山テラスで計画されているほか、住田町などでも開設の動きがあるという。
長谷川さんは「一つの町に一つぐらいの間隔でまちライブラリーが点在し、たくさんの居場所が生まれれば」と今後の展開に期待を寄せる。
1月の休業日は公式サイト(https://www.life-with-pechka.com/)で確認を。2月からは毎週水、木曜日定休とする。営業時間は午前11時~午後9時(日・祝日は午後5時まで)。駐車場は同店前のほか近隣にも用意されている。