明日の水産業を考える、市漁業就業者確保育成協議会が初のシンポジウム開催/大船渡

▲ 担い手と水産資源をテーマに初開催となったシンポジウム=大船渡市魚市場

 大船渡市漁業就業者確保育成協議会(会長・岩脇洋一市漁協代表理事組合長)主催の「明日の漁業を考える」シンポジウムは26日、大船渡町の市魚市場で開かれた。地域の基幹産業である水産業の重要課題「漁業の担い手」と「水産資源」をテーマに初めて行われ、専門家ら4氏が講演。出席者らは質問も交えながら熱心に聞き入り、今後の漁業、水産業のあり方を考える機会とした。

 

担い手と資源テーマに

 

 同協議会は、大船渡の基幹産業である漁業の就業者確保・育成を図ろうと平成28年9月に設立。市内沿海の漁協や大学、県、市など10団体で構成する。シンポジウムは活動の一環として開催した。
 この日は各地から約150人が参加。開会行事で岩脇会長が「今後、安定的な漁業生産を継続し、市内水産業の維持、発展をさせるためにも漁業就業者の確保、育成が必要。このことから協議会を設立し、各事業を実施している。シンポジウムを業務の参考にしてほしい」とあいさつ。続いて、4氏が順に講演を行った。
 最初に登壇したのは、岩手大学地域連携推進部三陸復興支援課の田村直司産学官連携専門職員。「協議会の取り組みと全国の担い手支援の事例」と題し、協議会の役割や漁業後継者確保に向けた先進地の事例などを紹介した。
 この中では、漁業後継者の育成に対し、行政、漁業者、地域コミュニティーが共同で取り組む重要性に言及。「行政による助成事業の取り組みだけではなく、行政と現場の意識の違いを埋めていくことも成功のカギになる」と述べた。
 続いて、北海学園大学経済学部地域経済学科の濱田武士教授が「漁業の担い手育成の課題」と題して講演。県内の漁業従業者数が年々減少傾向にあることなどを示し、担い手育成の課題や具体的な対策を説明した。
 このうち、新規就業の課題では、漁家世帯の後継者(家族が伴うUターン者、娘婿)や漁業外からの雇われ漁業就業者らが新規就業として定着するために必要な支援のあり方などを解説。漁家世帯の後継者には見習い時期の生活費を、雇われ漁業就業者には技術習得機会の提供、就業から漁村にとけ込むまでのフォローなどといった人間関係にかかわるすべての支援が必要とした。
 そのうえで、担い手育成に向け、「非常に骨の折れる取り組みだが、失敗も重ねながら実施してほしい。みんなで担い手育成を考えてもらいたい」と呼びかけた。
 後半は、水産資源に着目した講演を展開。北里大学海洋生命科学部環境生物学講座沿岸生物学研究室の広瀬雅人助教が「カキやホタテに付着する生物を調べてわかってきたこと」として、越喜来湾など岩手、宮城両県の沿岸域における付着生物と養殖生物との関係を紹介。
 最後は、国立研究開発法人水産研究・教育機構東北区水産研究所資源管理部の木所英昭浮魚・いか資源グループ長が、「三陸でイカやサンマがなぜとれなくなったか?─海の変化との関係─」と題して発表を行い、スルメイカの産卵場やサンマの漁場と、水温の関係性などを示した。
 参加者らは質問も交えながら、熱心に聴講。身近な水産業の課題を改めて確認し、今後の対策や解決策などを探っていた。