新体制づくりも視野に、開業医不在の対策探る/住田町保健医療介護連携構築検討会

▲ 人口減少下の実情に合った新体制づくりも見据えて検討=町役場

 相次ぐ民間医科診療機関の閉院を受けて住田町が本年度立ち上げた町保健医療介護連携体制構築検討会は、地域医療を守り続けるため、新たな体制づくりも含めた施策展開を模索している。医師確保は厳しい状況が続き、町内では独居高齢者や高齢者のみの世帯割合が増えて「老老介護」の負担が顕在化。看護と介護のサービスを一元的に提供できる拠点づくりの必要性も浮かび上がる。検討会では今後も定期的に協議を重ね、よりよいあり方を探る。


 町内では一昨年、昨年と民間医科診療所の閉院が相次いだ。町内の医科診療機関は、世田米の県立大船渡病院附属住田地域診療センターのみ。入院機能がないほか、一人暮らしの高齢者が体調に不安があるときに過ごせる〝居場所〟が不足している課題を抱える。
 この検討会は、開業医不在の状況が続く中でも保健や医療、介護などの各関係者が一層連携し、住民に安心感を与える体制構築を目指そうと、先月設置。委員は、一般社団法人未来かなえ機構や県立大船渡病院、住田地域診療センター、住田町社協、社会福祉法人鳴瀬会、町の各関係者で構成している。
 第2回検討会は23日に役場で開かれ、委員ら約10人が出席。町側から、町内の高齢者・介護サービスを巡る現状解説が行われた。
 町人口は年間100人のペースで減り続け、現在は5600人余り。昨年4月1日時点の高齢化率は42・08%となっている。
 地区公民館単位別にみると、最も人口が多い世田米は39・75%。下有住が42・71%、上有住は44・75%、大股は46・28%で、五葉は51・51%。
 町内の世帯数は、20年ほど前から2200世帯前後で推移しているが、高齢者世帯、一人暮らし高齢者の数は増加。29年4月の高齢者世帯数は742世帯で、全体の3分の1を占める。
 平成12年との比較では、296世帯増加。この中に含まれる一人暮らし世帯は441世帯で、同年比で233世帯増と倍以上の伸びとなっている。
 寝たきりや認知症高齢者の割合も増加傾向。介護サービスの充実が望まれる一方、利用者が点在していることから送迎移動に時間がかかるといった難しさを抱える。さらに、今後の推計では町内の高齢者人口はピークを過ぎ、利用者増が見込めない現状にある。
 一方で、利用者のニーズは多様化。介護サービスを担う人材確保や育成も求められている。以前から町内では、訪問看護ステーションがないといった課題が指摘されている。
 不安要素の半面、町内では65歳を過ぎても元気に働ける高齢者が多い特徴も。住民間のつながりが強く、医療と介護の垣根が低いといった良さも挙げられる。
 意見交換の中では「老老介護」の厳しさが話題に。出席者からは「家族1人がインフルエンザになってしまうと、本当にたいへんな状況。数日でいいから、回復まで過ごせる場所があれば」といった声が出た。住田地域診療センターの中で、かつて入院ベッドがあったスペースの有効活用を望む意見も出た。
 介護サービス拠点に看護師が常勤し、看護と介護のサービスを一元的に提供する「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」でも情報共有。福祉・介護サービスを受ける利用者の調整・相談にあたる従事者負担の軽減策でも意見交換を行った。今後は限られた人材の有効活用につながるICT(情報通信技術)のあり方も探る。
 高齢者向けにとどまらず、子育てや障害者福祉の充実を見据えた地域包括ケアの重要性でも認識共有を図った。今後も検討会を設け、看多機やICT活用の方向性など、他自治体の事例も参考にしながら検討を進めることにしている。