中心部に〝木造公共建築群〟、役場隣の消防分署整備が終盤に/住田

▲ 役場庁舎(右側)に続き、大きなひさしが特徴的な木造2階建て構造の新住田分署=世田米

 住田町が進める大船渡消防署住田分署新築工事は、外装整備の終了に伴い足場が撤去され、木造の外観があらわになった。平成26年度に完成した役場庁舎向かいに位置し、庁舎同様、木造2階建てで建設される。「森林・林業のまち」のシンボル的な役割を担い、中心市街地における公共木造建築群を生み出す施設で、3月中旬の完成、4月からの本格運用を計画している。

 

「大きなひさし」に共通性

 

 新分署は、町運動公園野球場の外野右中間側に隣接し、敷地面積は約5000平方㍍。施工は佐武建設・住田住宅産業・山崎工業特定共同企業体。設計監理は、SALHAUS一級建築事務所(東京都)が担っている。
 昨年5月に着工し、工期は今年3月19日まで。工事契約額は昨年12月の増額補正を経て、4億8656万円となっている。
 公募型プロポーザル方式で40業者から選ばれたSALHAUS社は「まちを見守る木の大庇(おおひさし)」として提案。2階建てのコンパクトな建築とした。
 役場と同じ構造の大きな庇は、外壁の劣化防止や屋外活動時の雨、日差しよけにもなる。さらに同社は、今後の中心部における建築整備に共通するキーワードになり得るとしている。
 柱に梁を貫通させて交差させる工法で駆体建築が進み、接続部には金物をほとんど用いず、木製の「込み栓」「楔(くさび)」を使用。伝統的な気仙大工の技術を活用・継承するほか、将来的な部材交換や接続部の締め直しも容易にできるという。
 柱や梁は、町産のスギ、カラマツの集成材を中心に調達。林業資源を生かす新たな産業化の観点から注目を集める木材パネル・CLT(直交集成材)も2階天井や階段部分などに活用した。
 1階は出動準備室、仮眠室といった救急出動に備える業務スペースに加え、展示ギャラリーを配置。消防ポンプ車や救急車両などが並ぶ車庫は2階への吹き抜け構造とした。2階には、事務室や会議室、団本部室などが入る。
 外装工事終了に伴い、今週に入って施設全体を覆っていた足場が外された。木造の外観があらわになり、同じく木造で整備された役場施設との調和も確認できる。
 今後は内装工事に加え、操法大会などに対応できる訓練スペース・駐車場の外構整備も展開。施設前には世田米小児童らの通学路があるほか、近年はまち歩きのコースにもなっており、施設整備がもたらす景観変化に住民の関心が高まっている。
 分署新築は、昭和49年に世田米清水沢地内に整備した現分署の老朽化や手狭さを受けての対応だが、町は新たな防災拠点を、中心市街地における中核施設の一翼と位置付ける。安全・安心の強化に加え、周辺の景観やまちづくりへの波及効果を見据える。
 両木造施設の近くに構え、議会や図書室が入る生活改善センターにも改築構想があるなど、公共施設再編期にある住田町。さらに、役場と世田米商店街をつなぐ昭和橋の架け替えを控え、観光物産館整備を見据えた具体検討も進む。役場、消防分署と続く木造整備の流れを生かした新たな魅力づくりの行方が、今後も注目される。