ともに まちの未来を、復興・産業振興にかかる4分野で30年度の「地域おこし協力隊」募集/ 陸前高田市

▲ 未経験者だった平山さん夫妻は、林業家としての自立を目指し昨年から協力隊として活動=気仙町

 陸前高田市は、復興と産業振興にかかる4分野において、平成30年度の「地域おこし協力隊」を募っている。東日本大震災で県内最大となる人的・物的被害を受けた同市だが、I・Uターン者をはじめとした〝新しい風〟による挑戦の数々が、まちに明るい変化をもたらしてもいる。今回の募集では従来からある林業分野に加え、これまでにない形の農業や移住定住促進に関する事業など、復興の過程において生まれた〝需要〟に応えるべく、新たに三つの分野で人材を募る。市は「さまざまなことにチャレンジできる土壌が陸前高田にはある」とし、意欲ある全国の人々に応募を呼びかける。

 

12日に東京で説明会

 

 面積の8割を森林が占める同市では、山林の保護と林業再生を目指すうえで「自伐型林業」を推進していくため、28年度に初めて林業分野で「地域おこし協力隊」を募集。現在は4人の隊員が最長3年間の任期で、山を守り育てる活動に携わっている。
 新年度は、引き続き「林業担い手」として3人程度を募るほか、①「ピーカンナッツによる地方創成プロジェクト」にかかる分野(農業パイオニアと食文化クリエイターを1人程度ずつ)②移住定住促進分野(4人程度)③地域産業資源開発・地域振興施設開業サポート分野(2人程度)──と、協力隊員としては新規の3分野でも募集を開始した。
 このうち①の「ピーカンナッツ…」で求めるのは、同市が昨年、東京大学およびチョコレート製造・販売業㈱サロンドロワイヤル(大阪市)と協定を交わし、産業化の取り組みを始めようとしている「ピーカンナッツ」の苗木育成・試験栽培など、農業に従事する人材。商業栽培を需要面から支えるうえでの市場開拓や、ピーカンナッツによる食文化の創造など、ブランディングに取り組む人も募る。
 ②の移住定住促進分野で採用された場合は、昨年夏に発足した同市のNPO法人「高田暮舎」へ配属に。移住者の受け入れによる少子高齢化の解消、地域活性化を図るため、移住定住ポータルサイトの運用や、ワンストップ窓口の運営、引っ越し後のフォローに至るまで、移住者・移住希望者らに切れ目なく支援する役割を担う。
 ③は、高田松原津波復興祈念公園内の新「道の駅」整備にかかり、施設開業サポートや、地域産業資源開発に従事する人を求める。同市産の食材を使った商品の考案、防災・減災のノウハウの集約・事業化など、本県観光の〝玄関口〟であり、教訓の伝承施設である道の駅の魅力創出全般に携わる。
 林業分野では引き続き、森林の経営・管理・施業を一貫して行う自伐型林業の実践と普及にあたり、資源の有効活用などの事業化を目指す人を求めている。
 本年度に辞令交付を受け、夫婦で協力隊として活動する矢作町在住の平山直さん(28)=千葉県鴨川市出身、朋花さん(28)=北海道日高町出身=は現在、大船渡市の林業家に弟子入り。自伐型林業の担い手として独立できるよう、技術を磨き、ノウハウを学んでいる。
 2人とも地元消防団に所属し、地区行事の運営に携わるなど地域の中でも活躍。直さんは、「陸前高田は、新しく来る人たちの受け入れに〝慣れて〟いる気がする。僕たち移住者に対しても積極的にかかわってくれる」という。
 「3年という(任用)期間が終わったときに、自立して食べていけるだけの地盤をつくるという点では難しさを感じることもあるが、人がみんな温かいおかげで〝あったかく〟生活していけるという点が魅力」と直さん。市内に少しずつ商業施設が再建されていることもあり、オフの日には夫婦で「おいしいもの探し」をするのが小さな楽しみだという。
 市は東京都で12日(月)、こうした現役協力隊員たちから話が聞ける「応募説明会」を開催。担当職員らが募集内容の紹介、個別相談などに応じる。会場は中央区京橋の越前屋ビル内にある「移住・交流情報ガーデン」の地下1階スペースで、開催時間は午前11時~午後5時。参加には事前の申し込みが必要。
 協力隊への応募に関する詳細は、市ホームページにある「くらし・定住支援関連事業」のページで確認を。問い合わせ、申し込みは市企画政策課(℡54・2111内線172、メールkikaku@city.rikuzentakata.iwate.jp)まで。