枯死の宝珠マツを伐採、クローン木の成長に期待/陸前高田・小友町華蔵寺(動画、別写真あり)

▲ 伐採され運ばれる華蔵寺の宝珠マツ=小友町

 陸前高田市小友町の華蔵寺(畑山祥山住職)境内にあり、昨年末に「枯死した」と診断された国指定天然記念物「華蔵寺の宝珠マツ」(昭和10年12月24日指定)が6日に伐採された。現在、滝沢市の森林総合研究所でこのマツのクローン木を育成していることから、指定は継続される。関係者らは寺のシンボルだった古木の死を改めて惜しむとともに〝新世代〟の成長に期待を寄せた。
 同寺の宝珠マツは、大正15年ごろ植えられたとされるクロマツ。本来、雄花がつく枝部分にいくつもの実が重なり合って結実し、「宝珠」のように見えるためこの名がついた。
 学術的にも貴重であると同時に、寺の象徴的な存在として地域住民からも愛されてきたが、平成27年ごろから樹勢が弱まり、土壌改良といった〝手当て〟もかいなく昨年末に枯死判定を受けた。最終的な原因は、松くい虫による被害だったという。
 この日は同市森林組合の協力で、マツの法要後に伐採作業を実施。畑山住職と寺族、寺の総代らが見守る中、葉のない枝が少しずつ落とされていった。樹高およそ20㍍にもおよぶ大樹で、作業も朝8時30分ごろから正午過ぎまで時間を要した。
 住職の母で、およそ60年前に同寺へ嫁いだという畑山瑞子さん(85)は、「私が来たころからすでに大きな木だった。80代ぐらいの方に聞くと、昔はこの木に登って遊んだとか。私自身はほとんど意識することもなく、そこにあるのが当たり前のように思っていたけれど…」と言葉を途切れさせた。
 伐採終了後、すっかり様相が変わった参道の光景を見た畑山住職(51)は、「あるはずのものがないのは変な感じ」と、実感がわかない様子で一言。「子どものころは、缶蹴りの鬼がスタートするのもあのマツの根元からだったし、野球の打球も相当受けてきた木。天然記念物というより前に、友達のような、いつも見守ってくれているような存在だった」と寂しさをにじませた。
 同マツの一部は今後、市立博物館が震災後初めての「植物標本」として残すことにしているほか、同寺でも幹の一部分を保管するとしている。
 国の指定は、「現状変更(伐採およびクローン苗木植栽)」として継続。市教委によると、クローンによる〝二世〟の苗木は、3年後をめどに滝沢から同寺へ戻る予定という。同じように宝珠をつけない場合は指定解除となるが、住職と市教委は「もう少し暖かくなったら様子を見に行きたい」と話し、順調な生育に期待した。