ど根性ポプラを剪定、横浜の庭師・山口さん/大船渡
平成30年2月10日付 1面

「安心して憩えるように」
神奈川県横浜市の庭師・山口篤則さん(45)は8、9の両日、大船渡市三陸町越喜来字杉下地内にある「ど根性ポプラ」の剪定(せんてい)作業を行った。同地内ではポプラを中心とした多目的広場の整備が進められており、ボランティアとして越喜来で精力的に活動してきた山口さんは「広場の完成後に集う人たちが安心して憩えるように」と、枝打ちに汗を流した。
ど根性ポプラは平成23年の東日本大震災のほか、昭和8年の三陸地震、同35年のチリ地震による津波に耐えたと伝わる地域復興のシンボル。山口さんは、東日本大震災直後の平成23年5月に初めて越喜来を訪れ、「がれきで埋め尽くされた平原に、1本だけ立っていた姿が印象的だったのを覚えている」と振り返る。
高さ約25㍍といわれるが、「登った実感としては、もう少し高い」という。また、「以前から剪定したいと思っていたが、これほど大きな木はどうしたらいいか悩み、ロープワークの勉強もした。本業の方にも生かせる技術を身に付けられたきっかけにもなったので、この木への思い入れは強い」と力を込める。

剪定作業では、落下の危険がある枯れ枝を刈った山口さん=同
本格的な作業は9日に実施し、落下の危険がある枯れ枝を刈った。「木には切られた跡がなく、まったくの手つかずの状態。一番高い所にはたこ糸が絡まっていた。きっと誰かがたこで遊んでいたときに、糸を切ってしまったのだろう」と驚く。
また、木が大きく二股に分かれているところには、津波で流されてきたと思われるロープや電線もあったが、「木に悪さをするものではない」と、あえて取り除かなかった。
一般的にポプラの寿命は60年ほどとされる。ど根性ポプラは少なくとも樹齢80年は経過しているとみられるが「下の方はすごく元気。上のあたりは、たくさん芽がついているが、もしかするといずれは世代交代で枯れるかもしれない。ただ、下を残してあげれば、また育つのでは」とみる。
仮設住宅の入居者たちと縄ないを行うなど、ボランティアとしても精力的に活動してきた山口さん。「みんな悲しいことを忘れて元気になってほしいと思うが、こうした震災があったことは残してもらいたい」と複雑な表情も見せながら、「たくさんの人に、ど根性ポプラを知ってもらいたいし、広場にするのはすてきな考えと思う。木を中心に、子どもたちやさまざまな人が憩える場所になってほしい」と願う。