権現様の魅力多彩に、3団体の演舞に講演も/住田で「けせんのたから」(動画、別写真あり)

▲ 来場者の間近で演舞を行う甫嶺獅子舞=住田町役場

 古くからの伝統芸能として気仙各地で受け継がれる権現様の魅力を発信するイベント・気仙民俗芸能祭「けせんのたから」は12日、住田町役場1階町民ホールで開かれた。気仙の3団体が迫力あふれる舞を繰り広げたほか、県内や全国の体系から浮かび上がる気仙の郷土芸能の特色を学ぶ講演も。町内外から訪れた住民は、多彩な角度から伝統の奥深さを感じ取っていた。
 気仙伝統文化活性化委員会(山口康文委員長)が主催。気仙では地域ごとに権現様がまつられ、正月の悪魔払いや式年祭での奉納など住民生活にも密接に結びついている。その特色や違いなどについて、認識共有を図ろうと企画した。
 文化庁の平成29年度文化遺産総合活用推進事業を活用。町教委と東海新報社が後援し、一般社団法人ケセンきらめき大学、一般社団法人文化財共働などが協力した。
 町内外から200人超が訪れ、町民ホールは満席状態に。東北文化財映像研究所長の阿部武司氏が「岩手の権現舞・獅子舞」と題し、映像も交えて講演した。
 阿部氏は本県の権現は神楽権現舞、獅子舞・権現様、鹿踊、太神楽の4体系に分類でき、さらに全体系が住田で受け継がれている点も挙げ、全国にはない特異性として強調。かつては山伏らによって受け継がれてきたものが、明治以降は住民が継承し、現在も地域のよりどころとなっている流れにも言及した。
 気仙では「ししまい」よりも「ごんげんさま」と呼ばれる傾向も指摘。「悪魔払いが中心的な役割を担っている。神様の仮の姿を表しているという藩政時代に担ってきた山伏の考え方からきているのでは。権現は仮の姿であり、祈とうして『神おろし』をして宿り、各家々を回っている地域が多い」と語った。
 交流プラザでは、甫嶺獅子舞(大船渡市)が熱演。ダイナミックな動きで活気を呼び込むと、演舞後にはもちまきを行って来場者に「福」を届けた。
 町民ホールでは引き続き、大股神楽獅子舞(住田町)が演舞を披露。子どもから中高年まで、3世代で連綿と受け継いできた神秘的な伝統芸能で魅了した。
 また、國學院大學の茂木栄教授が「全国の獅子と権現さま」をテーマに解説。気仙は県内でも民俗芸能が多い地域であるとしたうえ、「濃厚な伝承地帯である気仙が、全国的に知られていないことは残念」と述べ、今後の魅力の掘り起こしや発信に期待を込めた。
 フィナーレを飾ったのは、中沢権現(同)。地域で古くから伝わる舞に加え、毎年元日に「悪魔払い」として家々を回る時に行う躍動感あふれる舞でも盛り上げ、来場者から盛大な拍手を浴びた。