払い下げ受け〝新生〟へ、高田町大隅の仮設商店街/陸前高田

▲ 大隅つどいの丘商店街での連携事業創出を目指す事業者ら=高田町

 東日本大震災発生後の平成24年、陸前高田市高田町に仮設商業施設として開設された「高田大隅つどいの丘商店街」の施設利用期限が今年9月に迫ったことに伴い、同商店街に入居する一部事業者が、市から建物の払い下げを受けて営業存続することを決めた。今後は、別の仮設商店街で退去期限が近づいている事業者や非営利団体なども受け入れ、業種を超えた横軸連携による新事業を創出したい考え。市の産業を〝持続可能〟なものとするため、「地域の事業者全体を盛り上げるようなモデルケースをつくっていきたい」としている。

 

業種超えた新事業創出も、秋以降の入居希望者募る

 

 同商店街は独立行政法人・中小企業基盤整備機構の補助などを活用し、2階建てプレハブ2棟、平屋建てプレハブ1棟を整備。24年3月から入居が開始され、計13事業者で同年6月にグランドオープンした。
 当初の退去期限は、利用開始から丸5年となる29年3月。半年単位で「延長」されてきたが、最終的な期限がこのほど今年9月末に決まった。現在、11事業者が入居し、すでに本設再建などで退去を決めているところもあるが、カフェフードバー・わいわいの太田明成店主(51)は、「市から施設を払い下げを受けることは可能」と知り、同仮設で営業を続けることを決めた。
 同じく同商店街に入居する一般社団法人SAVE TAKATA(佐々木信秋代表理事)も〝残留〟し、異業種連携へ向けて太田店主らと新たなチャレンジをしていきたいという。
 これに伴い、同商店街では10月以降の入居希望者を募集。現段階ではなんらかの理由があって同町の新中心市街地に移転・再建できない人や、市内外で活動するNPOなどの「受け皿になれれば」と太田店主。被災前に借地事業者として店を経営していた自身も、本設施設の再建は現在、資金面で難しいと考えている一人だ。
 「同じく退去期限が迫っていて、すぐに再建できない店はどうしているのだろうと疑問に思っていた。仮設で続けたい人や、困っている人はいるはず。気軽に相談してもらえれば」と話す。
 佐々木代表理事(35)は、「人口が減っていく中、事業を展開する者同士の〝総力戦〟でまちを盛り上げていかないと厳しい。単なるテナント貸しとしての事業者募集ではなく、互いに栄え合う仕組みをつくろうという思いがある者同士でつながりたい」と語る。市内で活動する非営利団体同士がもっと連携できればという思いもあるという。
 すでに、高齢者の孤立防止・健康対策をふまえた減塩弁当の配達、一般社団法人などが企画する被災地ツアー等の受け入れなどを視野に入れる。双方が持つノウハウの共有、得意分野の役割分担が可能となれば、少子高齢化の課題に対応した新しい事業創出も、より現実的なものになると太田店主らは考えている。
 市は中心市街地に、すぐの再建が困難な事業者や起業者向けのテナント施設(チャレンジショップ)の設置も検討。同商店街は、「それとはまた別に、業種を超えてやっていこうという意欲を持つ人たちがつながれる場を目指したい」とする。
 賃料は約30坪の「大」が月額7万5000円、約15坪の「小」は同6万円前後を見込む。払い下げ自体は無償の見通しだが、これまで市が行っていた施設の維持管理も事業者負担となり、施設撤去の必要性が生じた場合の解体費用も自腹となる。同商店街の場合、その額はおよそ2500万円と試算。賃料から解体費用の積み立ても行う。
 一方で、「2500万円以上積み立てし、入居事業者と施設ごと、いずれは市街地へ移れる形が理想」と〝野望〟も抱き、同商店街が市内産業の盛り上がりをけん引する一助になれればと意気込む。
 入居などに関する問い合わせは太田店主(℡090・8585・9607)まで。