住宅需給ミスマッチ解消を、「長期計画」「短期戦略」展開へ/住田町

▲ 気仙川沿いに住宅が立ち並ぶ住田町。人口減少に伴い、空き家も増えている=世田米

 住田町は今年、住生活基本計画(仮称)の策定作業に入るとともに、居住希望のニーズ把握や住宅供給の体制充実を図る。町に寄せられる多様な定住相談に対し、空き家バンクへの登録が少ないことなどから、実際に定住に至る成約件数は低調。一方、町営住宅募集では対象戸数よりも申込件数が上回り、提供できる住まいと希望者のニーズが合わない需給のミスマッチが散見される。人口減少に伴い今後さらに空き家の増加が予想される中、町は長期計画づくりと短期戦略展開の両面で充実策を進める。

 

定住者確保のカギに、低調続く空き家活用

 

 住田町の人口は現在5600人余りで、年間100人ペースで人口が減少。空き家や高齢者のみの世帯の増加が予想され、住民が不安なく過ごせる住まいのあり方が重要視される。
 また、町外から町内に移り住む家族の希望に対応できる体制充実も急がれる。平成27年度策定の町総合戦略では31年度までの5年間で「社会増減ゼロ、年間移住者数9世帯27人」達成を掲げる。
 25年から5年間の人口社会増減を住宅別にみると、持ち家は一貫して減少。一方、町営住宅や民間アパート、公舎居住者は転出より転入が上回る年もある。
 町は20年度から空き家・空き地情報バンク事業を展開。ホームページなどで公表し、現在は空き家、空き地各4件を紹介している。
 本年度は「空き家を探しているのだが」といった町外在住者からの相談件数が42件に達した半面、成約件数は4件にとどまる。紹介できる物件数が少なく、移住者の多様なニーズに対応できる情報提供ができていない現状が続く。また、土地所有者の多くは売却を望み、移住希望者は賃貸を求める傾向が強いという。
 町営住宅では、昨年5月に空きが出た世帯用2戸の募集を行ったところ、5件の申し込みがあった。27年4月は世帯用2戸に対して申し込み12件、単身用も2戸に対して申し込み7件となり、抽選となった。
 町内には木造仮設住宅を含め公設住宅が280戸あるが、このうち町職員や教員、警察官ら公務員の居住は34戸(12・1%)。町職員は町外出身の採用者が増加傾向で、気仙両市の民間賃貸住宅に空きが少ないといった背景があるという。
 町内における民間賃貸住宅の空室紹介については現在、ホームページなどでの掲載数がゼロ。さらに、町内には不動産業者がおらず、民間同士でのやり取りには難しさを抱える。
 住宅政策について、町は長期計画と短期戦略に大別して展開する方針。長期計画では、人口動態や住宅の築年数などを把握したうえで、子育て世代や高齢者の視点に立ったより良い住まいのあり方をまとめる。
 短期戦略では町内居住のニーズ把握を進め、すぐに利用可能な住宅情報の「ストック」を進める方針。庁舎内では、移住に関する多様な相談対応を一元的に担う「ワンストップ化」も見据える。
 13日に行われた町地域デザイン会議でも、町側が住宅政策の現状や今後の方向性を示し、有識者らと意見交換。議論では「空き家をつくりかえる、良く見せていくことが大切では。実際に移住してきた人々の紹介もいいのでは」「町内に空き家は多いが、登録数は少ない。どうやれば登録してもらえるかを分析することが重要」などの意見が寄せられた。
 このほか、町ホームページによる情報発信が充実し、若者世代の関心を引くような構成になっているかを問う声も。単身者用の住まいの充実も図る必要性も話題に上った。
 定住者確保に向け、希望者の多様なニーズに応えるための体制整備は不可欠。それとともに、空き家の所有者である地域住民や出身者が活用しやすい施策や理解拡大も求められる。
 「医・食・住」の充実を掲げる神田町政が昨年8月にスタートし、半年が経過。新年度以降、地域の実情に合わせた住宅政策をどう打ち出すか手腕が問われる。