身近にある組織目指し、JAおおふなとが自己改革推進

▲ 1月に行われたバレーボール大会を特別協賛し、会場に試食ブースを設けるなど地域との結びつき強化を図っている=住田町

 政府の要請を踏まえ、全国の農協が農業者の所得向上などに向けた「自己改革」に取り組んでいる。JAおおふなと(新沼湧一組合長)は、「常に身近にある農協」を目指し、組合員や地域との結びつき強化に重点を置いた「改革」を進めている。農家に直接出向き、相談に乗る専任職員を配置したり、農作物を地域にPRするイベントを手がけて「つながり」の場を増やしているほか、自営の産直施設開設なども構想しており、新たな取り組みの成果に期待がかかる。

 

組合員との結びつき強化へ、自営の産直開設も構想

 

 政府は、平成26年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」の中で、31年5月までを「農協改革集中推進期間」とし、JAグループに対して自己改革を要請。全国約700の地域農協が主役となり、農業の成長産業化につなげられるようにと、一昨年4月には「改正農協法」が施行され、農協を指導・監査する全国農協中央会(JA全中)の一般社団法人化、権限縮小など組織の抜本的な見直しが図られている。
 JAおおふなとは、東日本大震災からの再建のため農林中央金庫などから受けた優先出資金107億9000万円を28年5月に全額返却し、自力経営のスタートを切った。今後の政府の方針次第では、准組合員の利用規制などを迫られる可能性も浮上しており、正組合員のおよそ倍の准組合員1万4000人を抱えるJAおおふなとにとっても「経営基盤を揺るがしかねない事態となる」と危機感を募らせている。
 こうした状況下、JAグループは農協の存在感を高めようと、組織をあげて「自己改革」を進めており、JAおおふなとも昨年度から取り組みを本格化させている。
 組合員のニーズに応える体制構築をと、昨春には農家とJAを結ぶ専任職員「TAC(タック)」2人を営農企画課内に配置。訪問実績はすでに延べ330件を超え、経理業務のサポート、営農相談などを行っている。
 販売事業を強化しようと、昨年7月には夏秋野菜の出荷式を初めて実施。軽トラの荷台に農作物を並べ、販売・PRする「青空市」を陸前高田市、住田町でも開催し、大きなにぎわいをみせた。
 昨年8月には、本店、支店の職員有志30人による「自己改革推進プロジェクトチーム」を旗揚げ。▽スポーツ▽産直▽6次化商品研究▽料理教室▽食育──の専門部をつくり、打ち合わせを重ねてきた。
 同チームによる検討・提案を受け、JAおおふなとは1月に住田町で行われた気仙地区小学生新人バレーボール交流大会を特別協賛。大会中の2日間、会場で菌床シイタケを使ったディップソースやバーニャカウダ、リンゴジュースの試食ブースを設置し、大会を盛り上げながら農協のオリジナル品をPRした。
 自営の産直施設のオープンや職員が学校などに出向いての食育など、今後も各専門部が特色ある事業を立案、実践する。
 31年4月には管内のすべての正・准組合員約2万1000人を対象に、戸別訪問形式のアンケートを実施し、農協の自己改革の取り組み状況について組合員側の評価を調べる。これを前に現在、正・准組合員のうち1500人に対して、同様の調査を実施しており、農協は本調査に向けたデータとして生かす。
 JAおおふなとの志田寿総務部長は「自己改革の文字通り、まずは職員一人一人の意識の変革が求められる。日ごろの業務に全力で当たるとともに、『農協はなくてはならないもの』と思ってもらえるよう、組織一丸となってさまざまな活動に取り組んでいく」と力を込める。