「漂流ポスト」新しく、今後も心のよりどころに/陸前高田(動画、別写真あり)

▲ 新しいポストを設置する赤川さん㊨=広田町

 およそ4年前、陸前高田市広田町にあるDIYガーデンカフェ「森の小舎」店主の赤川勇治さん(68)が開設した私書箱「漂流ポスト3・11」。そのシンボルとして同店に設置された古い郵便ポストが、20日に交換された。これまでのものは元の持ち主へ返還されるが、新しい品も以前と同じ丸型ポスト。赤川さんは「これ自体が皆さんの心のよりどころになっていて、なくすわけにはいかないと思っていた。同じような品が見つかってよかった」と胸をなでおろす。
 平成26年3月、大震災発生から3年が経過したのを機に、「震災で犠牲となった方たちに、ご遺族やご友人は語りかけたいことがあるのではないか。何か書き記すことで、自分の気持ちを整理したい人もいるのではないか」との思いから開設された漂流ポスト。大切な誰かを失った人、人にはき出せない思いを抱えた人などから、あてどころのない手紙が流れ着く場所となっている。
 店頭には私書箱を象徴するオブジェとして、一関市の人から借り受けたポストを設置。実際に手紙が投かんされたり配達されたりするわけではないが、昭和中期に製造された丸型ポストの素朴なたたずまいは、同店を訪れる遺族や行方不明者の家族らにとっても癒やしの一つとなっていた。
 一方、本来の持ち主へ返還するため、赤川さんは2年ほど前から代わりのポスト探しに奔走。奥州市水沢区にある姉体幼稚園(小川原聖子園長)が同園に置かれていたポストを提供してくれることになり、20日に運搬作業が行われた。
 これまでのポストは昭和34年製。新しいものは同28年製だが、外見はほぼ同じ。赤川さんは旧ポストに「ご苦労さま。お世話になったよな」と声をかけ、そのずっしりとした〝体躯(たいく)〟にポンポンと手をかけてねぎらった。
 赤川さんは、「ここへいらっしゃるご遺族の方が、このポストに話しかけたり、黙ってなでていくことがある。『これがあっての漂流ポスト』という思いがあった。姉体幼稚園のご厚意に、言い表せないほど感謝している」といい、無事に交換できたことを喜ぶ。
 そのうえで「まもなく発災から7年を迎えるが、まだご自分の思いを言葉にできない方はいらっしゃると思う。ますます漂流ポストの必要性と責任を認識している」と話していた。