「医療不安」拡大浮き彫り、住民満足度アンケート調査/住田町

 住田町は、町総合計画・町人口ビジョン・総合戦略施策の一環で本年度実施した住民評価アンケートの集計結果をまとめた。町の暮らしやすさについて尋ねたところ、肯定的に回答した割合は56・2%で、前年度比で6・5ポイント低下。道路環境や交通の便、買い物で満足度が高まった一方、医療環境で大幅に下がった。一昨年、昨年と民間医科診療所が相次いで閉院したことが要因とみられる。高齢化に伴い移動手段の確保などに不安を抱える住民が増加傾向にある中、医療面に対する不安の拡大が浮き彫りとなった。

 

総合戦略の一環で

 

 町は国のまち・ひと・しごと創生法に基づき、平成27年度から5カ年の人口ビジョンと総合戦略、さらに28年度から4年間にわたる総合計画を策定。人口ビジョンでは町の将来展望を、総合戦略ではその政策目標や重要施策を掲げ、総合計画は各重要施策の部門別計画に位置づけている。
 住民評価アンケートは主要施策などに反映させようと、前年度に続き実施。本年度は昨年秋に行い、18~72歳から無作為に抽出した町民1305人に発送した。回答率は35・9%(468人)で、前年度を3・7ポイント上回った。
 町の住みやすさに関しては「住みやすい」「どちらかといえば住みやすい」の合計が56・2%。前年度よりも6・5ポイント下回った。「住みにくい」「どちらかといえば住みにくい」の合計は38・0%で、前年度を5・7ポイント上回った。
 住みやすさの理由で最も多かったのは「自然環境や気候」。「静か、のんびり」「住民の人柄や交流」「生まれ育った町」といった項目の回答も多かった。半面、住みにくさの理由では「買い物」「病院」「交通の便」が上位を占めた。
 町に対する満足度は道路・交通、医療、買い物の3分野で質問。それぞれ満足度を尋ね、さらに自由記載欄を設けた。
 「不満」「やや不満」と回答した割合は道路・交通は54・3%、医療は75・0%、買い物は67・3%を占めた。「どちらでもない」は道路・交通が19・7%、医療は9・6%、買い物は15・4%。「満足」「やや満足」は道路・交通が20・5%、医療が9・0%、買い物は11・5%にとどまった。
 道路・交通は1・1ポイント、買い物は1・8ポイントそれぞれ「満足」「やや満足」の合計が前年度よりも増加。一方で医療では1・9ポイント下回った。逆に「不満」「やや不満」の合計は8・8ポイントも上昇した。
 町内では一昨年6月、世田米の上代医院が医師の健康上の理由で閉院。昨年6月には、上有住の櫻井医院が医師の高齢化や厳しい経営状況などを受け、360年にわたる運営の幕を閉じた。現在、町内の医科診療機関は、世田米の県立大船渡病院附属住田地域診療センターのみとなっている。
 こうした結果を受け、町企画財政課では「医師確保は難しい課題ではあるが、医師確保に限らない形で町民の医療環境をどう維持、向上させるかという町の方針を周知し、安心感向上を図っていく必要がある」と分析する。
 今回の調査では新たに、満足度向上につながる「住民の皆さんができること」という回答欄を設けた。このうち医療環境では自らの健康管理や健診受診といった声があり、こうした住民の思いを施策充実にどうつなげるかも今後注目される。
 ここ数年の町内の動きをみると、世田米地区で役場庁舎や特別養護老人ホーム、消防住田分署、農協支店の移転新築があり、さらにコンビニエンスストアの新規出店と再開発が進む。同課によると、アンケートの自由記載では、有住の住民に「世田米に事業が集中している」「町の施策が公平でない」との回答も目立ったという。
 アンケート結果は、今月号の町広報でも概要を掲載している。住みやすさや分野別満足度の回答割合は、別図の通り。