「知恵出し合い課題解決を」、神田町長が施政方針演述/住田町議会3月定例会

▲ 演述で住民の安心・安全確保や産業振興への意欲を示した神田町長㊨=住田町議会

 住田町議会3月定例会は27日、開会した。会期を3月9日(金)までの11日間と決め、神田謙一町長の施政方針演述や4議員による一般質問が行われた。神田町長は、昨年の町長選時から掲げてきた「医・食・住」を要とする重点施策を強調。将来を見据え、知恵を出し合って多様な課題解決を進める決意を込めた。一般質問は28日も午前10時から行われ、4議員が登壇する。

 

一般質問もスタート

 

 町長就任後、初の演述に臨んだ神田町長。「支え合う共生の町」の実現に向け「医・食・住の三つの要を中心とした重点施策により、スピード感を持って取り組む」と力を込めた。
 重点施策のうち、保健医療の充実では、開業医が不在でも町民が安心して暮らすため、保健・医療・福祉・介護の関係機関が連携した新たな社会資源の創出も含めた医療体制構築を掲げた。食産業の振興では、ビジネス展開実践者の育成に加え、国際基準を見据えた安心・安全で健康志向に応えられる供給体制整備も図るとした。
 移住・定住の促進では「まず住んでみることから始められる環境」の提供に取り組む方針。新規起業・就業への支援制度を進め、仕事づくりにも力を入れる。
 平成27年度に町がまとめた「人口ビジョン・総合戦略・総合計画」は、新年度は取り組み開始から実質3年目。「これまでは種をまき、根付かせる段階だった。今後はしっかりと芽を出し、しっかりとした幹になっていく。着実に成果を出して『住みたい町:住田』をつくりあげる段階だ」と述べた。
 生活環境対策では東日本大震災被災者の支援を継続するほか、役場前に移転する大船渡消防署住田分署との一体的な防災拠点づくりを展開。町内5地区の特色や個性を生かした地域づくりを進める「小さな拠点づくり」では、地域住民が主体となって活性化や課題解決に取り組める仕組みの構築を後押しする。
 所得対策のうち、森林振興では川上から川下までの木材流通システムで核となる木工団地事業体の経営安定化を最優先課題に挙げた。本年度と同様、木いく、食いくの各プロジェクトにも積極的に取り組み、観光産業振興による仕事創出も推進する。
 神田町長は演述の最後に「将来を見据えたまちづくりのため、今まさに自治体経営の力が試されている。中長期的には厳しい財政状況が想定される中で、町民の皆さんの声に耳を傾けるとともに、町の将来をしっかりと見定めながら歩みを進め、礎をしっかりと築き、知恵を出し合いながらさまざまな課題解決に取り組む」と語り、理解と協力を求めた。
 多田茂教育委員長の教育行政演述後は一般質問に入り、荻原勝、瀧本正德、林﨑幸正、菅野浩正(いずれも無所属)の4議員が登壇。このうち、林﨑議員は三陸木材高次加工協同組合と協同組合さんりくランバーの未償還金対応を取り上げ、町が両事業体や連帯保証人に10億円超の支払いを求める調停の状況をただした。
 神田町長は今年1月中旬に第1回の調停があり、町当局の弁護人と連帯保証人らがそれぞれ交わることなく、非公開で聞き取りが行われたと報告。「守秘義務がある」と詳細については明かさなかったが、今後は双方が歩み寄る重要性を強調した。
 調停手続きに入るための関連議案の議決から半年以上が経過した中、林﨑議員は再質問で「違う方法での債権回収があるのでは」と追及。横澤孝副町長は「調停でやれる範囲で進めたい」と述べ、解決時期に関する問いかけには「あまり長引かないように」と明言を避けた。
 トップ登壇の荻原議員は、環境問題の中で世田米の火石交差点付近に広がる「世小の森公園」の今後のあり方について質問。国道340号の改良工事で公園用地は縮小され、植えられている木々は高圧線鉄塔移設の影響を受けることが予想される。
 同議員は再質問の中で「避難所を示す看板はボロボロで、ベンチも傷んでいる。景観形成に配慮した公園の再整備を」と提言。佐藤英司総務課長は「これまで地域の方々が保全活動を続けてきた経緯がある。今後も地域と相談しながら進めたい」と述べた。
 中心地域の活性化プロジェクトを取り上げた瀧本議員は、世田米商店街背後の山なみで構想がある「花の森公園」の検討状況を質問。神田町長は「整備予定場所が民有地で、調査・分析・計画策定に時間と経費を要することから、町の事業全体からみた優先度や財政状況をふまえ判断したい」と慎重な姿勢をみせた。
 菅野議員は、住田高校の入学者確保につながる魅力づくりの具体策をただした。多田教育委員長は「これまでの各種支援策と合わせ、生徒たちの希望する進路をかなえる〝出口〟支援も検討したい」との考えを示した。