震災で全壊の県立高田病院、高田町の高台に再建/陸前高田
平成30年3月2日付 1面

東日本大震災の津波で全壊し、陸前高田市高田町の高台に再建された県立高田病院(田畑潔院長)は1日に開院し、多くの市民らが診療に訪れた。気仙圏域の回復・慢性期医療の中核を担う同病院。少子高齢化が進む中、安心して暮らせる地域づくりに寄与すべく、在院日数を短縮する医療サービス、訪問診療・看護にも力を入れ、持続的な医療の提供を目指す。
地域医療の拠点開院、 安全安心の暮らしに寄与へ
診療開始前の午前8時30分、職員約40人による全体ミーティングが行われ、田畑院長は「きょうから外来の患者が訪れることとなる。慌てず、確実に安全な治療を心がけてほしい。頑張っていきましょう」と呼びかけた。
総合受付がある1階待合ホールには、すでに市民らが大勢詰めかけており、次々と診療を受けていた。
2カ月に1度、同病院に通院しているという横田町の松田庄一さん(74)は「市民にとってなくてはならない病院。まだ慣れないけど、利用しやすくなったと思う」と話していた。
気仙医療圏の核を担い、主に急性期医療を手がける県立大船渡病院を補完し、回復・慢性期の患者の受け皿となっている高田病院。気仙町にあった旧病院(70床)は、震災で最上階の4階まで浸水し、入院患者ら16人、職員6人が犠牲となった。
発災2日後の3月13日に米崎地区コミュニティセンターを間借りし医療救護活動を開始。7月には米崎町に仮設の診療所が建てられ、診療を再開した。平成24年2月には一般病床(41床)が整備され、入院患者の受け入れを始めた。
病院の再建地は、市の高田地区被災市街地復興土地区画整理事業により造成された「高台⑤」(高寿園北側)で、標高は約52㍍。付近には高田小学校や31年4月の利用開始を目指す市保健福祉総合センターも建てられる。
病院施設は鉄筋コンクリート造2階建てで、延べ床面積は4265平方㍍。総事業費は37億7600万円。
1階には外来診療室、コンピューター断層撮影装置(CT)、嚥下(えんげ)造影の検査室、2階には1室4床を基本とする病室や手術室、リハビリテーション室、食堂・談話室などを配し、駐車場は164台分のスペースを設けた。
診療科は変わらず計8科で、病床数は震災前より10床減、仮設診療所より19床増の60床。常勤医師7人を含む職員77人体制で運営する。「災害に強い病院」として、3日分の電気を供給する自家発電設備や燃料を備える。
開院に合わせ、病院の基本理念を「安心して暮らせる地域づくりのために、信頼される医療を提供する」と、復旧後のまちづくり、地域包括ケアシステム構築を見据えた内容に改訂。患者に関する医療データが職員間で共有しやすくなる電子カルテを新たに導入し、チーム医療の充実を図っていく。
30年度中には一般病床の一部を活用し、「地域包括ケア病床」の運用も計画しており、病状が安定した患者が一日も早く在宅復帰できるよう専従スタッフが手厚い支援を行う。仮設診療所でも実施してきた訪問診療・看護にも力を入れていく。
田畑院長は「ようやく開院の日を迎えた。住み慣れた気仙地区で最期まで暮らせるよう、大船渡病院と機能分化したうえ、永続的な医療をしっかり提供していきたい」と気を引き締める。