独自の〝新教科〟本格実践、30年度から小中高校で「地域創造学」/住田町

▲ 本年度、総合的な授業の一環で栗木鉄山跡を見学した児童たち。今後は「地域創造学」としてさらなる充実が期待される=世田米

 住田町内の小中学校と県立住田高校の計5校で来年度から、新設教科「地域創造学」が時間割に組み込まれ、町独自の人材育成教育が本格化する。本年度、文部科学省から研究開発指定を受け、住田の自然資源やこれまでの特色ある教育展開を生かした取り組みを検討してきた。学年に応じ、年間35〜110時間の授業が行われる計画。県内で小・中・高連携による指定は初めてで、中山間地における教育モデルの確立など、多方面から注目を浴びる。

 

学年に応じ35〜110時間

 

 研究開発学校は、教育実践の中で浮かび上がる諸課題、時代に対応した新しい教育課程(カリキュラム)や指導方法を開発するため、学習指導要領等の国の基準によらない教育課程の編成・実施を認める制度。本年度、世田米小、有住小、世田米中、有住中、県立住田高校の計5校が新たに指定を受けた。
 住田町は豊かな自然環境が広がる半面、町制開始の昭和30年から人口が減り続け、人材流出による地域課題が山積。地域に根ざした人材育成は、持続可能なまちづくりの最重要課題とされる。
 町教育研究所と町内の小中高校に加え、世田米、有住の両保育園などが連携。保育園も含めて長い期間をかけ、自立して生き抜く力を身につけるとともに、他者と協働して豊かな人生や地域づくりを主体的に創造できる人材育成に取り組む。
 また、地域と学校が、子どもの成長や人材育成に向けた展望を共有する形も目指す。これにより、住民らの積極的な参画を促し、地域活性化にもつながるとしている。
 町は平成15年度から10年以上にわたり、幼児から高齢者まで各年代に対応した森林環境教育を展開。英語活動にも力を入れてきた。こうした取り組みを基盤としながら一貫性ある教育課程を構築することで、自律的活動力、人間関係形成力、社会参画力からなる「社会的実践力」の成長を目指す。
 本年度は、住田町教育研究所が中心となり、各学校とともに「地域創造学」で育成すべき資質・能力を検討。各学校でもこれまで実践してきた地域活動や体験型授業などをふまえ、指導計画の作成にあたってきた。
 新年度は、時間割に「地域創造学」の名称が組み込まれ、各学校現場での実践が本格化する。単元名の例としては「見つけよう、楽しもう住田の町」「みんなに教えたい住田の町」「気仙川の砂鉄と歴史を探ろう」「ふるさと・住田の未来を支える人々」などが計画され、体験活動を積極的に取り入れた授業展開が予想される。
 授業時間は、小学校はこれまでの生活科や道徳、外国語活動、総合的な学習の時間を見直し、1学年では106時間、2学年では110時間、3〜6学年は90時間とする。
 中学校では道徳、外国語、総合的な学習の時間をそれぞれ減らし、1学年は62時間、2・3学年は82時間を設ける。
 高校は総合的な学習の時間を見直し、1単位35時間を設定。各校の年間指導計画は、3学期中に地域創造学の視点で再構築する。
 小学1〜4年(保育園年長児の体験も含む)では教科名に愛称をつけるなど、親しみやすい授業づくりにも努める。少なくとも、3年間は新設教科を柱とした取り組みを展開。授業に臨んだ児童生徒に対する適切な評価や、学校や地域間における共通理解のあり方などを検討していく。
 研究成果は、文部科学省による学習指導要領改定時の参考となる。中山間地の課題解決につながる教育モデルの確立に加え、将来の進路にも生きる住田への愛着醸成、住田高校の新たな魅力づくりや入学者確保にどうつながるかなど、住民の関心は高い。
 住田町教育委員会の菊池宏教育長は「新年度は実践面で第一歩を踏み出すことができ、期待は大きいものがある。地域や事業所などからの協力が不可欠であり、結びつきをより有機的なものにできるかが、勝負どころととらえている」と話す。