〝輝の花〟一旦見納め、慰霊と復興願う光の催し/陸前高田(動画、別写真あり)
平成30年3月13日付 7面

陸前高田市の有志らによる震災追悼イルミネーション「高田に輝(ひかり)の花を咲かせよう」は10日、高田町の中心市街地にある「まちなか広場」で開催された。主催する「高田に輝を」(熊谷幸代表)が設置したキャンドルや電飾、慰霊のモニュメントは、夜の訪れとともに幻想的な光を浮かび上がらせ、見物に訪れた人たちを優しく照らした。まちの復興が進むにつれて主催者らの生活環境も変化してきたことから、同イベントは5回目となる今回で終了とするが、メンバーは「市民の中に『またやろう』という機運が高まっていくのなら、いつか再開したい」としている。
有志らが26年から実施、開催5回目で一区切り
この催しは平成26年3月、同市出身の中里七扇さん(33)が「支援を受けているばかりではなく、地元住民自身が動き出すきっかけにしよう」と第一中時代の同級生らに呼びかけ、賛同者と始めたプロジェクト。
当時のJR陸前高田駅を起点とした「駅前通り」で初開催され、第2、3回は高田町川原地区の被災跡地で、第4回は同町の災害公営住宅下和野団地で実施した。「輝」の名称は、中里さんらの同級生で震災により亡くなった菊池勇輝さん(当時25)の名前からとり、鎮魂の祈りと支援への感謝、地域を輝かせていこうという思いを込めた。
当日の準備はメンバーを中心に行われてきたが、ガラスの空きビンを利用したキャンドルホルダーには、地元の中学生が絵を描いた。光と反射の空間作品を生み出し、宮沢賢治童話村(花巻市)の設置作品なども手掛ける首都圏のアート集団「ミラーボーラー」は初回から催しに協力。今回は盆行事などに使われる「灯ろう」と、ハスが開花するイメージを組み合わせたモニュメントを制作した。
昨年誕生したばかりの新しい市街地で初開催された今年は、広場に遊びに来ていた親子連れなども多数来場。スマートフォンでモニュメントを撮影したり、空きペットボトルで作られたベンチに腰掛けるなどして、ロマンティックな光の空間に酔いしれた。
26年の開始当初からほぼ毎年見学に来ているという、同町の災害公営住宅に住む柳下サキ子さん(65)は、「何もなくなってしまった駅前通りで、色とりどりに輝くオブジェを見たときは、感動のあまり言葉が出なかった。そのひとときだけは何もかも忘れることができた」と述懐。「復興の状況に応じて開催場所が変わってきたから、この明かりのことは場所の記憶とともにを思い出せる」としみじみ語った。
この4年余りで主催者たちも少しずつ復興へと歩みを進め、おのおのの日常生活を取り戻しつつあることから、催しはこれでいったん休止とする。
これまでかかわってきたミラーボーラーの麻田亮さん(48)は、「この1年でまちの様子が本当に変わった。震災ボランティアとして陸前高田へ来たことはあったが、『何かしたい』とモヤモヤしていたときに声をかけてもらい、かかわることができてよかった」と話し、地域と人の〝前進〟を喜んだ。
「高田に輝を」メンバーの新沼大樹さん(29)=大船渡市大船渡町=は、「これで〝終わり〟ではなく、〝区切り〟。若い世代がこうして活動してきたということを知ってもらいたいし、いつかまたやれたらと思う。そのためには人手もいる。慰霊の気持ちや、まちを盛り上げたいという思いを持つ人が必要」と話し、同じ志を持つ人の輪が広がることを願った。