新年度に訪看事業開始へ、開業医不在対策で/住田町

▲ 訪問看護事業の立ち上げ、発展を見据え意見交換=住田町役場

「複合的サービス」目指す

 

 住田町は平成30年度から、医療資源不足の補完を目的に、訪問看護機能を軸とした複合的サービスの構築に取り組む。新年度内の事業開始を見据え、さらに情報通信技術を生かした遠隔サービスや、気仙ではまだ例がない看護小規模多機能型居宅介護(看多機)施設の開設も視野に入れる。医師確保だけに頼らない新たな〝医療資源〟の掘り起こしにつながるか、今後の取り組みが注目される。
 町議会3月定例会では、神田謙一町長が施政方針演述で「開業医が不在でも町民が安心して暮らしていくため、保健・医療・福祉・介護の各関係機関が連携し、新たな社会資源の創出を含めた医療体制の構築に取り組む」と強調。課題打破につながる事業展開を進める方針を示していた。
 これに先立ち、町は昨年12月、一般社団法人未来かなえ機構に対し、医療環境整備の一環として訪問看護事業の検討を要請。同機構は町保健福祉センター内に事務所を構え、気仙3市町を主な対象とした地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」を運営している。
 また、町は同月、保健医療介護連携体制構築検討会を設置。メンバーは同機構理事や県立大船渡病院、県立高田病院、住田町社協、社会福祉法人鳴瀬会、町の各関係者で構成している。
 検討会では、町内の高齢者・介護サービスを巡る現状を分析。町内では独居高齢者や高齢者のみの世帯割合が増えて「老老介護」の負担が顕在化。看護と介護のサービスを一元的に提供できる拠点づくりの必要性も見定めてきた。
 その結果、30年度からは医療資源不足の補完を目的とし、訪問看護機能を軸とした複合的サービスの構築に着手する。世田米地区内での拠点場所選定や看護師採用を進め、同年度中に始める流れを描く。運営は、未来かなえ機構が担う方向で調整が進む。
 段階的に機能充実を図り、有住地区内でのサテライト施設設置や情報通信技術を生かした遠隔サービスの構築に取り組む方針。さらには、介護サービス拠点に看護師が常勤し、看護と介護のサービスを一元的に提供する看多機の開設も視野に入れる。保育や障害者福祉の充実も含め、地域共生事業への波及も見据える。
 30年度以降の取り組みに関しては、12日に町役場で開かれた第4回検討会で協議。出席メンバーからは「看護師のプライベートの時間を尊重した働き方ができるように」「女性が働きやすい環境を」といった指摘に加え、医療行為を担うことができる「特定看護師」を育成するシステムづくりも話題に上った。
 将来展開について「看多機は必要であり、もっと時期を前倒しして整備を」「退院しても体調に不安を抱える住民は多い。数日過ごせる施設を」といった意見も。検討会では来月以降、視察なども行いながら、運営のあり方をまとめることにしている。
 町内では一昨年、昨年と民間医科診療所の閉院が相次いだ。医科診療機関は、世田米の県立大船渡病院附属住田地域診療センターのみとなっている。
 本年度に町が実施した住民評価アンケート結果をみると、医療分野で「不満」「やや不満」と回答した割合は75%。前年度比で8・8ポイントも上昇した。
 町は民間医師誘致を行っているが、後継確保には至っていない。こうした中、検討会では町内や町近郊に暮らし、再就職を考えている「潜在看護師」の活用を見据える。また、医療や保健、看護、介護の各関係者のさらなる連携や情報共有を促進し、持続可能な住民サービス構築を目指すとしている。