インバウンド誘客拡大へ、マルゴト陸前高田が通訳ガイドと巡るツアー計画

▲ 陸前高田の職人文化を軸としたツアーを考案するため、東京の会社が陸前高田市内各地を取材・撮影=小友町

 教育旅行の誘致、コーディネートや民泊事業を展開する陸前高田市の一般社団法人マルゴト陸前高田(大久保光男代表理事)が、インバウンド(訪日外国人旅行)誘客の拡大に向けた取り組みを進めている。団体向け事業で培ったノウハウを生かし、インバウンド向けコンテンツの制作を計画。気仙大工やカキ養殖といった地域の職人文化と通訳ガイドを結びつけた市内巡りツアーの実現を目指し、現在、東京の経営コンサルティング会社とともに外国人が楽しめるプランづくりを本格化させている。

 

地域の職人文化を軸に

 

 個人客が多いインバウンド向けコンテンツは、団体客を対象とした事業を展開してきたマルゴト陸前高田にとって〝次のステップ〟となる試み。経営コンサルティングを手掛け、インバウンド商品も取り扱っている東京の合同会社シュタイン(石川光最高経営責任者)に協力を依頼し、陸前高田に根付いている気仙大工やカキ養殖といった職人文化を軸に、同法人が実施している復興最前線ツアー、民泊などの事業を組み込んだ、市認定通訳ガイドと一緒に市内を巡るツアーのあり方を模索している。
 コンテンツ制作に向けた具体的な取り組みとして、同社はこのほど、外国人が楽しめるプランを作るための取材・撮影を同市内各地で行った。社員2人とカメラマンが参加し、市認定通訳ガイドの4人も対応できる日程の際には同行した。
 社員らは3日間にわたり、竹駒町の小泉木工所、小友町の箱根山テラス、気仙大工左官伝承館、通訳ガイドと巡る復興最前線ツアーの様子などを取材。民泊先では温かな手料理を撮影したほか、カキ漁業者の仕事ぶりにも触れた。
 このうち、伝承館では、武藏裕子館長が気仙大工の技術が至るところに光る母屋や、東日本大震災の追悼モニュメントである「3・11希望の灯り」などを案内。社員が旅行者役を務め、通訳ガイドが武藏館長の説明を旅行者に伝えている場面も撮影した。
 通訳ガイドの村上オルテンシアさん(44)=横田町=は、「陸前高田には素晴らしいところ、楽しめるところがたくさんあり、日本の人たちは親切。外国からたくさん来てもらい、そのことをもっと知ってもらえたら」と期待。
 同じく下斗米霞さん(43)=大船渡市猪川町=は、「もっと外国の人に来てほしい。(出身国の)中国は防災意識が少ないので、万が一のための知識を陸前高田で身に付けて、そして復興の様子を見ていってもらいたい」と真剣な表情をみせた。
 同社のプロジェクト運営責任者・吉田章さん(33)は、東京から陸前高田までの移動距離の長さや、地方の公共交通が外国人にとって敷居が高いものであることなどを課題として挙げる一方、「海外のアーティストは日本家屋や手仕事に関心が高い。その点で陸前高田はポテンシャルが高く、ツアーの仕上げ方にもよるが、人気が出る可能性は十分にある」としている。
 今日取材・撮影した〝材料〟は、インバウンド向けの旅行プランとして組み立て、同社が運営している海外向けのサイトで紹介する予定。
 マルゴト陸前高田では、「個人向けのパッケージプランを提供することにより、防災を学びたい団体層だけでなく、外国の個人客にも陸前高田の純粋な魅力を伝えていきたい」と話している。