原告漁業者の訴え棄却 、「浜の一揆」訴訟 「県の不許可処分は適法/ 盛岡地裁

▲ 判決後に開かれた報告会=盛岡市・産業会館

 サケの固定式刺し網漁を許可しないのは不当だとして、気仙の漁業者を含む県漁民組合(藏德平組合長)の組合員100人が県に対して不許可処分の取り消しなどを求めた、いわゆる「浜の一揆」訴訟の判決言い渡しが23日、盛岡市の盛岡地方裁判所で行われた。判決では、中村恭裁判長が「県の不許可処分は適法」などとして原告の訴えを棄却した。原告側は仙台高裁に控訴する方針。

 

サケ刺し網漁認めず

 

 小型漁船で操業する漁業者で構成する同組合の組合員ら原告側は、震災からの復興や後継者育成のため、「漁協や浜の有力者の経営による定置網にサケ漁を独占させるべきではない」と平成27年11月に提訴。1人年間10㌧を上限としてサケの固定式刺し網漁を許可するよう求め、2年4カ月にわたって法廷で争ってきた。
 訴訟の主な争点となったのは、サケの資源保護と漁業調整。
 判決言い渡しで中村裁判長は、「固定式刺し網漁業はその参入障壁の低さ、漁獲効率の良さ、採捕したサケを人工ふ化放流に必要な親魚として使用しがたいことなどから、これによるサケの採捕は人工ふ化放流事業の実施を困難にする恐れがある」と指摘。
 さらに「県沖合で採捕されるサケはほぼすべて、手間と費用を要する人工ふ化放流事業に起因する資源であり、これを同事業と無関係の固定式刺し網業者が採捕することは著しく不公平となる」としたうえ、「サケの採捕を許していないことは、漁業法、水産資源保護法および県漁業調整規則の目的にかなうものであり、合理性を有する」との判断を示し、原告の訴えを退けた。
 判決後に開かれた報告会では、藏組合長(81)が「われわれ漁業者は、県を一番信用してきたはず。それがこのような結果になって、本当に情けないというか言葉にならない。受け入れがたい判決だ」と落胆の色をあらわにした。
 控訴については、「弁護士や原告の皆さんと相談しながら」と語るにとどめたが、出席した約40人の組合員からも判決への不満が相次いでおり、訴訟は仙台高裁に闘いの場を移して続いていくものとみられる。
 固定式刺し網でのサケ漁獲をめぐっては平成2年、網にかかるサケの混獲を認めるように求め、当時の気仙地区固定式底刺網組合が一斉操業を強行。県に混獲したサケの処分方法を求めて実力行使に打って出たという背景もある。
 この一斉操業にも参加した菅野修一さん(65)=陸前高田市広田町=や瀧澤英喜さん(61)=大船渡市三陸町越喜来=も原告団のメンバー。
 判決を受け、菅野さんは「(判決には)納得できないし、正直なところ、行くところまで行ってやろうという思い」と、瀧澤さんは「取るべきものはわれわれも取って、きちっと放流事業に使うなど、水産業のために取っていけばいいのではないか。菅野さんとは平成2年の一斉操業から一緒にやってきた。今後もともにやっていきたい」と語った。
 判決後、達増拓也知事は「県の不許可処分の妥当性が認められたものと考えている。原告に対しては、関係者とともにサケ資源の重要性や現状について、理解を求めていきたい」とコメントを出した。