消防住田分署が竣工、4月から本格供用/住田町役場向かいに新拠点

▲ ランニングコースなども設けられた新住田分署=世田米

 住田町が進めてきた大船渡消防署住田分署新築工事が24日までに完了し、通信機器の移設などを経て4月1日(日)に本格供用開始を迎える。新たな防災の要は、平成26年度に完成した役場庁舎向かいに位置し、庁舎同様に木造2階建てで整備。地元材をふんだんに使って「森林・林業のまち」のシンボル的な役割を担うとともに、中心市街地における公共木造建築群に広がりを生んだ。きょう25日午後1時から、一般住民向けの見学会が行われる。

 

 公共木造建築群に広がり、きょう見学会開催

 

向かいに位置する役場庁舎とともに、木造公共施設群を形成=同

 現在の住田分署は、世田米清水沢地内に構える。大船渡地区消防組合発足に合わせ、昭和49年に建設。老朽化に加え、駐車や訓練スペースを満足に確保できない手狭さも課題となっていた。
 新分署は、町運動公園野球場の外野右中間側に隣接し、敷地面積は約5000平方㍍。施工は佐武建設・住田住宅産業・山崎工業特定共同企業体。設計監理は、高田東中校舎なども手がけたSALHAUS一級建築事務所=東京都=が担った。 
 昨年5月に着工し、総工費は4億8656万円。工事は今月19日に完了し、24日は建築関係者向けの見学会が行われた。27日から通信機器の移設作業が行われ、本格供用開始は4月1日を見込む。
 町は新分署を、中心市街地における中核施設の一翼と位置付けてきた。公募型プロポーザル方式で40業者の提案から選ばれたSALHAUS社は、「まちを見守る木の大庇(おおひさし)」として提案した。
 防災拠点としての機能だけでなく、町の新しい景観をリードする役割も目指した。町役場と同様に大きな庇を設けることで、今後控える公共建築整備などの「共通言語」になり得るとしている。
 工法には「貫式木材ラーメン構造」を採用。木材の特性を生かした構造で、高い耐震性と間取りの自由度を確保した。
 また、柱梁の貫の接合部には、木製の込み栓と楔(くさび)を利用。極力金物を用いずに、木造伝統の技術を踏襲した。柱や梁は、町産のスギ、カラマツの集成材を中心に調達した。
 屋根や床、階段の構造部材には、林業資源を生かす新たな産業化の観点から注目されるスギ材の木材パネル・CLT(直交集成板)を利用。耐震性能向上や、内装仕上げとして用いた。
 1階には、出動準備室、仮眠室といった救急出動に備える業務スペースなどを配置。消防ポンプ車や救急車両などが並ぶ車庫は2階への吹き抜け構造となっている。2階には、事務室や会議室、団本部室などが入る。
 分署棟東側には、さまざまな利活用ができる駐車場兼訓練広場を確保。ランニングコースも設けた。今後は操法競技への対応に加え、役場や野球場と連動した催事利用も予想される。
 西側には休憩広場も整備。さらに、分署棟1階のエントランスピロティの壁は展示利用が可能な構造となっているなど、住民の積極的な活用が期待される空間も多い。
 SALHAUS社の安原幹共同代表(45)は「大規模、中規模の木造建築が並ぶ場所は全国的にも珍しい。近代建築はなるべく少ない部材で大きな空間を生み出すことが求められるが、よりたくさんの木材を用いて地域に開かれた空間をつくる新しい形が生まれたのでは」と語る。
 住田分署整備に伴う起債償還は、今後の町の財政運営を圧迫する要因の一つとなる。
 今後は防災機能向上だけでなく、新施設を地域活性化や交流活動などにもつなげ、住民満足度の向上につなげられるかにも関心が集まる。
 25日の一般向け見学会は午後1時~4時30分に開催。事前申し込みは不要。希望者には、スライド映像を交えた説明も行う。