気仙でも「特定延長」導入、該当・非該当者への支援重要

▲ 一定の要件を満たさないと仮設住宅に継続入居できない「特定延長」が始まった=陸前高田市

 東日本大震災発生から、きょうで7年1カ月を迎えた。新年度に入った今月から、県は一定の要件を満たす人のみが仮設住宅に引き続き入居できる「特定延長」の導入を開始。県によると、気仙両市を含む沿岸6市町では、みなし仮設も含めおよそ1800世帯が該当し、引き続き仮設暮らしを余儀なくされる。一方で非該当世帯の中にも、まだ次の住まいへ移る算段がついていない人もいる。被災者らが仮設住宅を〝卒業〟し、恒久的な住まいへ移るための支援や、長期化する仮設暮らしへの対策がいっそう重要となっており、気仙両市でもそれぞれ取り組みが進められる。

 

震災から7年1カ月

 

 応急仮設住宅の供与期間は原則として建設から2年間。しかし被害が広範囲におよんだ東日本大震災では、設置者の県が1年ごとに市町村と協議し、国の同意を得て期間を延長してきた。
 延長の方法は、一律で1年間延ばすもの(一律延長)と、要件に該当する人のみを対象とするもの(特定延長)の2種類ある。設置3年目からは「一律延長」の方法がとられ、被災者ならだれでも入居継続できたが、県は昨年5月、30年度から気仙両市など5市町村で特定延長に切り替える方針を発表した。
 入居を延長することができるのは、災害公営住宅、防災集団移転促進事業、土地区画整理事業といった公共工事の工期などの関係から、供与期間内に仮設住宅から退去できない仮設住宅入居者(みなしも含む)。これらの要件に該当せず、特別な理由がない世帯は期限内に退去しなければならない。
 大船渡市の場合、県の発表より1年早い28年に「30年度から特定延長を受け入れる」と表明。28年7〜8月には仮設入居者向けの説明会を開き、当時の入居者770世帯を対象に住宅再建意向調査を行うなど、早い段階から特定延長導入を見据え動いてきた。
 同意向調査では、①再建時期が決まっている②再建時期は決まっているが、健康面に課題があり支援が必要③再建時期が未定。健康や資金、就業などでの支援が必要④再建に課題があり、日常生活での支援も必要──と、個々の状況を4段階に分類。それぞれの状況に合わせて、市と、応急仮設住宅支援協議会を構成する市社協、共生地域創造財団、応急仮設住宅支援員らが連携し、個別対応を行ってきた。
 福祉、就業、資金面などの関係機関と被災者をつないで課題解決を図るとともに、必要な手続きの付き添いにもあたった。特定延長の届け出が締め切られた昨年からは、再建への課題が大きい③と④の該当世帯に対して支援を一層強化してきた。
 市住宅公園課によると、今年3月末までに対象世帯の意向は100%確認が終了。再建方法が未定の世帯はゼロとなり、非該当者のうち災害公営住宅への入居を希望していた世帯は、全て申し込みを済ませたとしている。
 今後、防集や区画整理の造成、建築に要する日数などを勘案すると、市内では31年度当初でみなしも含む28世帯、32年度同には6世帯が仮設住宅に残ると見込む。同課は「今後も地道に支援、働きかけをしていく」とし、引き続き取り組みを進めていく考えだ。
 陸前高田市の場合は、被災範囲が広く、区画整理事業によってまちづくりが進められる高田・今泉両地区の宅地造成に時間を要していることなどから、29年度末時点で特定延長該当世帯は302世帯。非該当も197世帯にのぼる。 
 しかし同市では、学校用地に建設された仮設住宅の撤去・集約化を同年度内に図ったことなどから、非該当世帯の退去も大きく進展。現在、学校仮設に残っている人はわずかで、その大半が「近日引っ越し予定」とする。市が28年8月に1435世帯を対象に行った住宅再建意向調査では33世帯が「意向未定」と回答していたが、特定延長について説明し、災害公営住宅などへの移転を促すといった対策をとってきた。
 市建設課は、「個々の事情により退去まで時間がかかる方がいることは確かだが、制度そのものにはご理解をいただいている」とする。現在の課題は、仮設住宅に入居実態がないなど、連絡がつかず意向が把握できない世帯が数軒あること。同課は「保証人や家族を通じて本人と接触していく」とする。今後も長期間連絡が取れず、仮設団地の撤去・集約に支障をきたす場合は、「強制執行」の措置もありえるという。
 一方、該当世帯にとっては、長期化する仮設での暮らしも悩みだ。入居者からは「ほかの人たちが次々と家を再建する中、置いていかれる不安が強くなる一方」といった声が聞かれる。不便な生活環境からくる体調不良なども懸念され、仮設に残らざるを得ない人々の見守りも重ねて重要となっている。