「住民ごちゃまぜで体操を」、健康運動指導士の藤野さん 本年度も気仙各地で活動(別写真あり)

▲ 常に笑顔で接し、体操の楽しさを伝える藤野さん㊨=世田米・農林会館

 一関市千厩町在住の健康運動指導士・藤野恵美さん(62)は本年度も、住田町の各仮設住宅団地に出向いての体操指導を継続する。東日本大震災直後から7年にわたり、陸前高田市内の避難所や仮設住宅、災害公営住宅で実施してきた体操指導は先月末で終了したが、今後も同市内では各種運動教室の指導者として活動。住田町では仮設住宅のみならず、運動を継続的に行いたい住民グループや高齢者らとも体操を楽しむ。「被災したかどうかにかかわらず、住民がごちゃまぜになって体操が続けば」と、今後を見据える。


自主的な継続も見据え

 

 藤野さんによると、3月末まで7年間における気仙での活動日数は422日、各仮設住宅団地ごとの指導回数は1617回に上る。活動をスタートさせたのは平成23年3月27日。陸前高田市内最大の避難所となった第一中学校では、持ち込んだラジカセで音楽を鳴らし、いきものがかりの『ありがとう』などに合わせたストレッチ体操を指導した。
 大船渡市や気仙沼市の大島の避難所も巡り、多い時では1日で12カ所にも達した。仮設住宅建設後も継続的に足を運び、陸前高田市では災害公営住宅でも指導を重ねた。
 陸前高田市での仮設住宅団地や災害公営住宅での活動は、先月末に自らで区切りをつけた。「支援から応援に、そして住民の日常となって交流につながる流れを後押しできたかな」と振り返る。
 災害公営住宅の住民からは「もう来なくなるの」と、さみしがる声も受けたという。それでも藤野さんは「『指導に来るから仕方なく体操するか』といった雰囲気が生まれる前に区切りをつけたかった思いもある。住む人が自主的に行動していかないと」と語る。
 一方、5月30日(水)に行われる「チャレンジデー」には終日参加予定。さらにシェイプアップ教室や高齢者教室、保育園での親子体操などで講師依頼を受けており、陸前高田とのつながりは続く。
 23年秋から続く住田町の仮設住宅での活動は、本年度も町から要請を受けた。今後1年以上にわたり住宅再建を待つ住民もいる中で、住民から「引き続き指導してほしい」との要望があったという。本町(世田米)と中上(下有住)の各団地を、月1回訪問する。
 また、町内の住民グループによる運動教室にも講師として参加。12日に農林会館で行われた活動では、女性住民ら約20人とともに椅子やボールを用いて楽しく汗を流す時間をつくった。前年度同様、本年度も毎週火曜日開設の中心型よりあいカフェ「しょうわばし」に出向き、高齢者と一緒に体操を楽しむことにしている。
 藤野さんは、陸前高田市や住田町に特別な思い入れがある。震災当日、同町での指導を終えて戻る途中に、高田町の旧酔仙酒造付近で大津波に行く手を阻まれた。同町のサン・ビレッジ高田に避難し、一夜を過ごして翌朝自宅に戻った後も、一緒に身を寄せた子どもたちや高齢者の健康を心配し続けた。
 震災直後からはぐくんできた体操による交流の輪が、今後は地域全体に広がってほしいと期待を込める。「被災したかどうかは関係なく、いろんな人が集まり、みんながごちゃまぜになって体操を楽しんでほしい」と話す。